社内SEの技術職を象徴する、サーバー(インフラ)、盾(セキュリティ)、クラウドが連携するイメージイラスト。

社内SEの仕事

社内SEの技術職|インフラ・セキュリティ・クラウドの仕事内容解説

「SIerでインフラ構築の経験を積んだけど、このスキル、事業会社でどう活かせるんだろう?」
「社内SEって一括りにされるけど、技術の専門職ってどんな種類があるの?」
「インフラ、セキュリティ、クラウド…自分はどの分野でキャリアアップを目指すべきか知りたい!」
質問者
質問者

現在SIerやSESで専門技術を磨いているあなたへ。

特定の技術領域で経験を積む中で、そのスキルを「誰のために、何のために使うのか」をより深く追求したいと考えたことはありませんか?

あなたのその技術力は、事業会社のIT基盤を支え、ビジネスを直接ドライブさせるための強力な武器になります。

この記事では、社内SEの中でも特に専門性が高い「インフラ」「セキュリティ」「クラウド」という3つの技術職に焦点を当て、それぞれの仕事内容、やりがい、そしてSIer/SESでの経験がどう活かせるのかを具体的に解説します。

この記事を読めば、漠然としていた社内SEの技術職の全体像がクリアになり、あなたの次のキャリアパスを描くための確かなヒントが見つかるはずです。

この記事の前提

この記事は「社内SEの技術専門職」に特化して解説します。以下の情報をお探しの方は、まずはこちらの記事をご覧ください。

この記事を書いた人(マサトシ)

マサトシ

マサトシ(詳細プロフィールはこちら

SIerでの開発・保守経験を経て、金融、外資系など計4社の事業会社で社内SEとして約20年にわたりキャリアを築いてきました。インフラ、アプリ、ヘルプデスクから部門長まで幅広く経験し、現在は採用業務にも携わっています。社内SEの本音や転職・キャリアアップのポイントなど、実務者だからこそわかる現場情報をお届けします。

社内SEのIT基盤を支える3つの専門職

企業のビジネスを根底から支えるITシステム。その心臓部であるIT基盤を守り、進化させているのが「インフラ」「セキュリティ」「クラウド」の専門家たちです。

かつては「インフラ担当」の仕事でしたが、サイバー攻撃の高度化やクラウド化の波を受け、専門性が深化。それぞれが独立した職種として確立されてきました。

これら3つの職種は、互いに密接に連携しながら企業のIT基盤を動かしており、SIer/SESで培った技術経験を活かす絶好のフィールドと言えます。

社内SE「インフラ担当」の仕事とは?【安定稼働の守護神】

インフラ担当は、サーバー、ネットワークといったITシステムの物理的な土台を構築・維持する「安定稼働の守護神」です。全てのシステムが動くための基盤を支える、まさに縁の下の力持ちです。

マサトシ
マサトシ
SIerでのインフラ構築経験は、まさに即戦力として活かせます。違いは、顧客の要件ではなく「自社の事業継続」というミッションのために技術を使うこと。障害を乗り越え、安定稼働を維持した時の達成感は格別ですよ。

主な仕事内容と求められるスキル

  • 主な仕事内容:オンプレミス環境にあるサーバーやネットワーク機器の設計・構築・運用・保守、データセンターの管理、PCのセットアップ(キッティング)、IT資産管理など、業務は多岐にわたります。
  • 求められるスキル:サーバーOS(Windows, Linux)、ネットワーク(TCP/IP, ルーティング)、仮想化技術など、ITインフラ全般の網羅的な知識が求められます。特に、ハードウェアからソフトウェアまで原因を切り分けて問題を解決するトラブルシューティング能力は、SIerでの障害対応経験が直接活きるスキルです。

もっと詳しく知りたい方へ

インフラ担当の年収やキャリアパス、具体的な一日の流れなど、より詳細な情報はこちらの記事で解説しています。

社内SE「セキュリティ担当」の仕事とは?【情報資産の番人】

セキュリティ担当は、企業の持つ情報資産(顧客情報、技術情報など)をあらゆる脅威から守る「情報資産の番人」です。技術的な対策だけでなく、ルール作りや社員教育まで、その役割は広範囲に及びます。

マサトシ
マサトシ
守りのイメージが強いですが、実は経営と密接に関わる戦略的な役割です。「このセキュリティ対策を実施すれば、安心して新しいビジネスに挑戦できます」と経営層に提案することも。SIerでセキュリティ製品の導入経験などがあれば、事業会社のルール策定や製品選定で大いに価値を発揮できます。

主な仕事内容と求められるスキル

  • 主な仕事内容:全社的なセキュリティポリシー(ルール)の策定、セキュリティ製品(EDR, SIEM等)の導入・運用、脆弱性診断の実施、インシデント発生時の対応(CSIRT1)、PマークやISMS認証の維持・監査対応などを行います。
  • 求められるスキル:サイバー攻撃の手法や防御策に関する深い知識はもちろん、個人情報保護法などの関連法規、各種ガイドラインへの理解が不可欠です。インシデント発生時には、冷静に状況を分析し、関係者を動かす対応力が求められます。

もっと詳しく知りたい方へ

セキュリティ担当に求められる資格や、SIerとの役割の違いなど、より詳細な情報はこちらの記事で解説しています。

社内SE「クラウド担当」の仕事とは?【ビジネス変革の推進役】

クラウド担当は、AWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドを最大限に活用し、ビジネスのスピードと柔軟性を高める「ビジネス変革の推進役」です。攻めのIT施策をリードする、花形のポジションの一つです。

マサトシ
マサトシ
クラウド技術の進化は速く、学び続けられる面白い仕事です。SIerでクラウド案件に携わった経験があれば、その知識を活かして自社のクラウド活用を一気に推進できます。コードでインフラを自動構築するIaCなど、モダンな技術に触れる機会も多く、技術者としての市場価値を高めやすい領域ですね。

主な仕事内容と求められるスキル

  • 主な仕事内容:クラウドサービスの選定・導入、クラウド環境の設計・構築・運用、コストの最適化、IaC2による構成管理、サーバレスやコンテナといったクラウドネイティブ技術の活用推進などを担当します。
  • 求められるスキル:主要クラウドサービス(AWS, Azure等)に関する深い知識と実践的な構築スキルが必須です。SIerでの経験に加え、コードでインフラ構成を管理するスキル(IaC)や、スクリプトを用いた業務自動化スキルなどを身につけると、より価値の高いクラウドエンジニアとして活躍できます。

もっと詳しく知りたい方へ

クラウド担当とインフラ担当の具体的な違いや、将来性など、より詳細な情報はこちらの記事で解説しています。

三位一体で動く!プロジェクトで見る連携のリアル

ここからは、これら3つの専門職が、実際のプロジェクトでどのように連携し、SIerとは違う価値を発揮するのか、そのリアルな姿を見ていきましょう。

よほど大きな企業でない限り、一人の担当者が複数を兼任することも珍しくありません。だからこそ、お互いの領域を理解し、「自社の成長」という共通のゴールに向かって協力することが重要になります。

ケーススタディ:『全社的なSaaS(顧客管理システム)導入』プロジェクト

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1
クラウド担当の動き(推進役)

まず、ビジネス部門からの「営業効率を上げたい」という要望を受け、プロジェクトを牽引。複数のSaaS製品を技術的に評価・選定し、経営層や関係部署に「この新しいツールで、営業活動はここまで変わります!」とメリットを提示し、導入の合意形成を主導します。

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2
セキュリティ担当の動き(門番・相談役)

選定されたSaaSに対し、「門番」として安全性を徹底的に評価。「このSaaSは安全性が高いですが、当社の基準に合わせるにはこの設定が必須です」と、守るべき一線を定義。情報漏洩などのリスクを洗い出し、安全な利用体制を整えます。

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3
インフラ担当の動き(基盤の守り手)

導入が決まったSaaSと、社内の基幹システム(例:オンプレミスにある人事DB)を連携させるため、「基盤の守り手」として動きます。安全なネットワーク経路の設計・構築を行い、「安定稼働のためには、ここのデータ連携部分の作り込みが肝心です」と、システム全体の安定性を担保します。

このように、三者は「顧客の指示」ではなく「会社の利益」という共通のゴールに向かって動きます。この当事者意識を持ってビジネスに貢献できる感覚こそ、事業会社で働く社内SEの醍醐味と言えるでしょう。

【一覧比較】インフラ・セキュリティ・クラウド担当の違いと共通点

改めて、三者の違いと共通点を一覧表で整理してみましょう。SIer/SESでのあなたの経験が、どの領域で最も輝きそうか、考える参考にしてみてください。

違いが一目でわかる比較表

インフラ担当 セキュリティ担当 クラウド担当
主なミッション IT基盤の安定稼働と維持管理 情報資産の保護とリスク管理 クラウド活用によるビジネス変革と俊敏性の向上
管理対象 オンプレミス中心のサーバー、ネットワーク、データセンター 技術、人、ルールを含む組織全体の情報セキュリティ体制 AWS、Azure等のパブリッククラウド環境、SaaS
仕事のスタイル 守り(安定・堅実) 守り・攻め(監査・統制・戦略) 攻め(変革・効率化)
コアスキル ITインフラ全般の網羅的知識、トラブルシューティング能力 脅威分析、リスク評価、関連法規の知識、インシデント対応力 特定クラウドの深い知識、IaC等のコードによるインフラ管理スキル

3職種に共通して求められる能力

  • 自社ビジネスへの深い理解:技術を「何のために」使うのかを常に考える視点
  • コミュニケーション能力:他部署やベンダーと円滑に連携し、物事を進める調整力
  • プロジェクト推進力:計画を立て、課題を解決しながら最後までやり遂げる力
  • 継続的な学習意欲:日進月歩の技術トレンドを追いかけ、学び続ける姿勢
マサトシ
マサトシ
結局のところ、どの担当でも「会社のビジネスを良くするためにITをどう使うか」という視点が一番大切ですね。技術はあくまでそのための手段。この視点は、SIer時代に顧客の課題解決に取り組んだ経験が大いに役立ちます。

まとめ:あなたの技術経験に合った専門性を見つけ、市場価値の高い社内SEを目指そう

今回は、SIer/SESから社内SEの技術職を目指すあなたのために、「インフラ」「セキュリティ」「クラウド」担当の仕事内容と、その連携のリアルな姿を解説しました。

  • システムの安定稼働を支える縁の下の力持ちに魅力を感じるならインフラ担当
  • 会社の未来を守る砦として専門性を極めたいならセキュリティ担当
  • 最新技術でビジネスを変革する最前線に立ちたいならクラウド担当

それぞれ役割は異なりますが、どれもあなたの技術経験を活かせる、やりがいの大きい仕事です。

この記事が、あなたのスキルと興味に合ったキャリアを見つけるための羅針盤となれば幸いです。

より詳しい仕事内容やキャリアパスは、各担当の詳細記事で解説していますので、興味のある分野をさらに深掘りしてみてください。

社内SEへの転職やキャリアアップを考え始めたあなたへ

社内SEというキャリアに興味が湧いたら、次はいよいよ具体的な転職活動の準備です。でも、「何から始めればいいの?」「自分に合う転職エージェントは?」と迷ってしまいますよね。

そんなあなたのために、転職の成功確率をグッと上げるための記事を2つご用意しました。ご自身の状況に合わせて、ぜひご覧ください。

この記事で使われている専門用語の解説

1. CSIRT (Computer Security Incident Response Team)
「シーサート」と読む。サイバー攻撃などのセキュリティインシデントが発生した際に、原因究明や被害拡大の防止など、対応の中心となる組織やチームのこと。
2. IaC (Infrastructure as Code)
サーバーやネットワーク、ストレージなどのITインフラの構成情報を、プログラムコードのようにテキストファイルで記述・管理する手法。手作業をなくし、効率的でミスのないインフラ管理を実現する。
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マサトシ

外資系企業や金融機関等、複数企業で社内SEとして20年以上の経験|アプリ、インフラ、PM、IT戦略策定等幅広い業務を担当|情シスの採用責任者としてキャリア採用の面接経験も多数

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