評価画面のイラストと、「社内SEの評価を向上する6つの方法」という記事タイトル。

社内SEの仕事

社内SEの評価を向上する6つの方法|SIerとは違う「ビジネス貢献」の伝え方

「社内SEに転職しました。SIerと同じように頑張っているのに、なぜか評価されている気がしない…」
「うちの会社、社内SEの評価基準が曖昧で、何を目標にすればいいか分からない」
「社内SEに転職すると評価の基準はどう変わるんだろう?」
質問者
質問者

現役の社内SEの方、あるいは社内SEへの転職を考えているSIer・SESエンジニアの方なら、一度は「社内SEの評価」について、こんな悩みを抱いたことがあるのではないでしょうか。

結論からお伝えします。あなたが評価されていないと感じるなら、それはあなたの能力が低いからではなく、社内SEとSIerとでは「評価されるためのゲームのルール」が根本的に違うからです。

この記事では、SIerとは全く異なる社内SE特有の評価基準と、評価を上げるための具体的なアクションプランについて、私の20年の経験から徹底的に解説します。

この記事を書いた人(マサトシ)

マサトシ

マサトシ(詳細プロフィールはこちら

SIerでの開発・保守経験を経て、金融、外資系など計4社の事業会社で社内SEとして約20年にわたりキャリアを築いてきました。インフラ、アプリ、ヘルプデスクから部門長まで幅広く経験し、現在は採用業務にも携わっています。社内SEの本音や転職・キャリアアップのポイントなど、実務者だからこそわかる現場情報をお届けします。

この記事を読めば、こんなことが分かります!

  • SIerとは根本的に違う、社内SEの評価軸
  • あなたの頑張りが評価されない構造的な理由
  • 明日から実践できる、評価を上げる6つの具体的なアクション
  • あなたのスキルが評価されやすい「会社の選び方」

この記事は社内SEの「評価」に特化した内容です。社内SEの魅力やメリット全体をまず知りたい方は、こちらの親記事からご覧ください。
>>社内SEのメリットとは?仕事のやりがい・評価・将来性をまとめて解説

SIerとは全く違う!社内SEの評価を左右する「2つの評価軸」

なぜ社内SEの評価は分かりにくいのでしょうか。それは、SIerの評価軸とは全く異なる、「守り」と「攻め」という2つの評価軸が存在するからです。まずはこの根本的な違いを理解しましょう。

軸1:守りのIT(減点されないためのベースライン評価)

これは、社内SEの基盤となる業務であり、「できて当たり前」と見なされる評価領域です。具体的には、システムの安定稼働、セキュリティの維持、迅速な障害対応などが含まれます。この領域でミスをすると評価は大きく下がりますが、完璧にこなしても「すごい」と評価されることは少ない、いわば減点方式の評価と言えるでしょう。しかし、この「守り」の信頼なくして、「攻め」の評価はありえません。

軸2:攻めのIT(評価を積み上げるための付加価値評価)

ここがSIerとの最大の違いであり、あなたの評価を大きく左右するポイントです。具体的には、ITを活用した業務効率化、コスト削減、売上向上への貢献などが評価されます。SIerでは顧客の要件を満たすことがゴールですが、社内SEは自らビジネス課題を発見し、ITでどう解決するかを提案・実行することで評価を積み上げていきます。これは、加点方式の評価であり、成果が青天井で評価される可能性を秘めています。

なぜあなたの仕事は「評価されない」のか?3つの構造的課題

「頑張っているのに、評価に繋がらない…」多くの社内SEが抱えるこの悩みの背景には、乗り越えるべき3つの構造的な課題が存在します。

課題1:「見えない仕事」のパラドックス

結論として、あなたの貢献が評価されない最大の理由は、その仕事が「成功した時ほど見えなくなる」という矛盾にあります。
これは特に「守りのIT」で顕著な課題です。例えば、あなたが非常に優秀で、サーバーの負荷を予測して事前に増強し、大規模なシステム障害を「未然に防いだ」とします。これは素晴らしい仕事ですが、問題が起きなかったため、あなたの貢献は誰にも気づかれず、評価の対象にすらならないのです。逆に、いつも障害を起こしてその対応に追われている人の方が「頑張っている」ように見えてしまう、という皮肉な状況が起こり得ます。

課題2:評価基準の曖昧さと「便利屋」化

明確な評価基準がない環境では、あなたの専門性は正しく評価されず、「ITの便利屋」として消費されてしまう危険があります。
特にIT部門への理解が浅い企業では、社内SEに対する明確なKPI1(重要業績評価指標)が存在しないことがあります。その結果、評価が上司の主観に大きく左右されたり、「PCの調子が悪い」といった専門外の業務に追われ、本来評価されるべき専門的な仕事に時間を割けなくなったりするのです。

課題3:コストセンターという立場

会社における「コストセンター」という立場が、あなたの成果を過小評価させるバイアスを生んでいる可能性があります。
伝統的に、情報システム部門は利益を直接生み出さない「コストセンター2」と見なされてきました。この「コスト(経費)を使う部門」という認識が根強いと、どんなに業務を改善しても「コストを削減して当たり前」と見なされ、その成果が正当に評価されにくいという課題があります。

社内SEの評価と市場価値を爆上げする!明日からできる6つのアクション

では、どうすればこれらの課題を乗り越え、正当な評価を勝ち取れるのでしょうか。ここでは、20年の経験から見えてきた、評価される社内SEになるための具体的な6つのアクションプランをご紹介します。

アクション1:「守り」の貢献を徹底的に可視化・報告する

結論はシンプルです。「見えない仕事」は、見えるようにすれば良いのです。
その理由は、報告されない貢献は存在しないのと同じだからです。例えば、「月次システム稼働レポート」を作成し、「今月もシステム稼働率99.99%を維持しました。障害ゼロ件です」と報告する。セキュリティパッチを適用したら、「今週、〇〇の脆弱性に対応し、情報漏洩リスクを未然に防止しました」と報告する。地道な活動を文書化し、定期的にアピールすることが、評価の第一歩です。

アクション2:常に「金額」と「時間」で語る癖をつける

ビジネスの世界における共通言語は「数字」です。あなたの貢献を、この共通言語に翻訳して伝えましょう。
なぜなら、「便利になった」という定性的な報告では、上司や経営層にはその価値の大きさが伝わらないからです。例えば、「RPA導入により、経理部の月次処理が50時間削減されました。これは人件費に換算すると年間〇〇円のコスト削減に相当します」というように、自分の仕事の価値を具体的な金額や時間に換算して語る癖をつけるのです。

マサトシ
マサトシ
この「数字で語る」ためには、その会社の業務知識を深く理解していることが大前提になります。まさにここが事業会社SEの真価を発揮できるポイントで、業務を理解しているからこそ、システムトラブル発生時に「どの部署の、どの業務が、何時間止まり、いくらの機会損失になるか」といった業務影響を適切に把握し、経営層に報告できるのです。

アクション3:業務部門の懐に飛び込み「真の課題」を発見する

評価される「攻めのIT」の種は、会議室ではなく、常に現場にあります。
なぜなら、システムは現場の業務のために存在するからです。定期的に各部門に足を運び、「何か困っていることはありませんか?」とヒアリングしましょう。現場の担当者との雑談の中に、システム化されていない非効率な手作業や、彼ら自身も気づいていない潜在的な課題が隠されています。頼られるビジネスパートナーになることが、価値ある提案の源泉です。

アクション4:DX・AI時代をリードする「攻め」のスキルを磨く

現代の社内SEには、守りだけでなく、ビジネスを成長させる攻めの武器が不可欠です。
なぜなら、企業の競争力そのものが、IT活用能力に直結する時代だからです。特に以下の3つの領域は、あなたの評価を大きく引き上げます。

  • クラウド活用:単にサーバーをIaaSに移行するだけでなく、PaaSやSaaSを駆使して開発スピードやコスト効率をどう改善したか。
  • セキュリティ強化:ゼロトラストの考えに基づき、どう会社の資産を守るアーキテクチャを設計・導入したか。
  • 生成AI・データ活用:社内の業務効率化に生成AIをどう活用したか。散在するデータをどう分析し、経営判断に役立つインサイトを提供したか。

これらのトレンド技術を駆使してビジネス課題を解決できる人材は、今まさに求められています。

アクション5:小さな「改善提案」を実績として積み重ねる

大きなホームランだけでなく、日々のヒットを打ち続けることが、信頼に繋がります。
大規模なDXプロジェクトも重要ですが、評価される人は日々の小さな改善も疎かにしません。「あの手作業を、簡単なスクリプトで自動化しました」「問い合わせの多い質問をFAQとしてまとめました」といった小さな成功体験を積み重ねましょう。これが「あの人に相談すれば、何とかしてくれる」という信頼残高となり、やがて大きなプロジェクトを任されるきっかけになります。

アクション6:社内外の「物差し」でキャリアを複眼的に見る

社内の評価だけに依存するのは危険です。常に外部の物差しで自身の市場価値を測り続けましょう。
その理由は、社内の常識が世間の非常識である可能性や、会社の業績によって評価制度自体が変わるリスクがあるからです。定期的に外部のセミナーに参加したり、資格を取得したりして、自分のスキルが市場で通用するレベルにあるかを確認しましょう。客観的な物差しを持つことで、会社と対等な立場でキャリア交渉ができます。

マサトシ
マサトシ
特に、伝統的な日本企業では、直接的な仕事の評価とは別に、昇進や昇格の条件として特定の資格(例:応用情報技術者試験、プロジェクトマネージャ試験、TOEICのスコアなど)が設定されている場合があります。長く働くのであれば、こうした社内での「通行手形」となる資格は、計画的に取得しておくことをお勧めします。

重要なのは「環境選び」:あなたのスキルが活きる会社の見つけ方

どんなに努力しても、評価基準が自分と合わない会社では正当に評価されません。最後に、あなたのスキルセットが最も輝く会社を選ぶ、という戦略的な視点についてお伝えします。

① 内製型企業:技術力が評価されやすい環境

技術力をキャリアの軸にしたいなら、自社で開発を行う「内製型」の企業が適しています。
こうした企業では、SIerと同様に、設計・開発能力といった技術的なスキルがビジネスの競争力に直結するため、高く評価される傾向にあります。手を動かし続けたいという志向を持つ方には、最適な環境と言えるでしょう。

② 外注型企業:調整力・業務知識が評価されやすい環境

ビジネスへの貢献やマネジメントで評価されたいなら、「外注型」の企業が選択肢になります。
開発を外部のベンダーに委託している企業では、技術力そのものよりも、ベンダーを管理するプロジェクトマネジメント能力や、社内の要望を的確に要件に落とし込む業務理解力・調整能力が重視されるからです。

マサトシ
マサトシ
会社によって、これほど評価されるポイントは異なります。自分が持っているスキルが評価されやすい事業会社に行く、というのも賢いキャリア戦略の一つです。

まとめ:評価される社内SEとは「ビジネスの成果に責任を持つパートナー」である

今回は、社内SEの評価基準と、評価を上げるための具体的なアクションについて解説しました。

  • 評価の軸:「守り」で減点を防ぎ、「攻め」で加点を狙う2階建ての構造を理解する。
  • 課題の克服:「見えない仕事」を可視化し、「数字」で貢献を語る。
  • 具体的な行動:現場の課題発見から最新技術の習得まで、主体的なアクションを積み重ねる。
  • 環境戦略:自分の強みが評価される「戦う場所」を賢く選ぶ。

結論として、現代において評価される社内SEとは、もはや単なるIT担当者ではありません。会社のビジネスを深く理解し、その成長と成果にITの力でコミットする「事業推進パートナー」なのです。この記事が、あなたの市場価値を高める一助となれば幸いです。

社内SEへの転職やキャリアアップを考え始めたあなたへ

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FAQ:社内SEの評価についてよくある質問

Q1. どんな資格を取れば評価に繋がりますか?
A1. ITスキルを証明する場合、応用情報技術者やクラウド認定資格も有効ですが、それ以上に業務への深い理解を示す業界特有の資格が、高く評価されるケースも少なくありません。例えば、旅行会社の社内SEであれば「国内旅行業務取扱管理者」の資格は、業務知識のアピールに非常に有用です。

Q2. やはり技術力は、それほど評価されないのでしょうか?
A2. いいえ、技術力は「信頼の土台」として不可欠です。しかし、それ単体で評価されるというよりは、「その技術力を使って、いかにビジネス課題を解決したか」という文脈で評価されます。技術は目的ではなく、あくまで手段と捉えることが重要です。

Q3. 上司がITに詳しくない場合、どうアピールすればいいですか?
A3. まさに「アクション2:常に『金額』と『時間』で語る癖をつける」の実践が効果的です。技術的な詳細を語るのではなく、「この改善で、年間これだけのコストが浮きます」「この自動化で、月あたりこれだけの作業時間が短縮されます」といった、誰にでも分かるメリットを強調して伝えましょう。

Q4. 評価制度がしっかりしている会社の見分け方は?
A4. 面接で「情報システム部門のKPIや目標設定は、どのように行われていますか?」と質問してみてください。明確な目標管理制度(MBOやOKRなど)があり、その目標が経営戦略と連動していることを具体的に説明できる会社は、評価制度が機能している可能性が高いです。

Q5. ユーザー満足度調査は、具体的にどう実施すればいいですか?
A5. Googleフォームなどのツールを使い、年に1~2回、簡単な匿名アンケートを実施するのがおすすめです。「ITサポートの対応速度」「システムの使いやすさ」「IT部門への要望」といった項目で5段階評価をしてもらい、フリーコメント欄を設けると、具体的な改善点が見つかりやすくなります。

この記事で使われている専門用語の解説

1. KPI (Key Performance Indicator)
重要業績評価指標。組織の目標達成度合いを定量的に測定するために設定される、具体的な指標のこと。例えば、「システム稼働率99.9%」や「問い合わせ平均回答時間24時間以内」など。
2. コストセンター
企業内で直接的な売上を生み出さない間接部門のこと。経理、人事、情報システム部などが該当する。対義語は、営業部門などのプロフィットセンター。社内SEは、コストセンターから脱却し、いかに企業の利益に貢献しているかをアピールできるかが重要になる。
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マサトシ

外資系企業や金融機関等、複数企業で社内SEとして20年以上の経験|アプリ、インフラ、PM、IT戦略策定等幅広い業務を担当|情シスの採用責任者としてキャリア採用の面接経験も多数

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