ITストラテジスト試験の難易度、合格に必要な勉強時間と論文対策のポイント

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ITストラテジスト試験の難易度|合格に必要な勉強時間と論文対策

SIerでPMとしての経験は積んできたけど、言われたものを作るだけじゃなくて、事業会社で「何をすべきか」から企画したいんだよな…。
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「ITストラテジスト試験」が上流工程の頂点だって聞くけど、経営知識なんてないし、論文も難しそうだ。本当に自分に合格できるんだろうか?

SIerやSESで開発・マネジメント経験を積み、次は事業会社の社内SEとして「企画」から携わりたいと考えているあなた。
あるいは、既に社内SEとして働いているものの、「このIT投資は本当に経営に貢献しているのか?」という疑問を感じているあなた。

その答えを見つけるための選択肢として、IT国家資格の最高峰ITストラテジスト試験(IT Strategist Examination, 以降、ST試験と表記)があります。しかし、その圧倒的な難易度や「経営戦略レベルの論文」という未知の壁を前に、自分には縁遠い資格だと感じているかもしれません。

この記事では、ST試験がどのような資格であり、SIerエンジニアや社内SEが取得することでキャリアを「実行者」から「構想家」へといかに昇華させるのかを、客観的なデータと具体的な学習戦略を交えて徹底的に解説します。

記事を読めば、ST試験への挑戦が、あなたのキャリアをITコンサルタントやCIO(最高情報責任者)といった、事業を動かすリーダーへと引き上げる、確かな自己投資であると実感できるはずです。

なお、この記事では最上流の国家資格「ITストラテジスト」に特化して解説しますが、社内SEとしてのキャリア全体を見据えたスキル戦略や、他の資格との優先順位について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事 社内SEの市場価値を上げる資格とスキル|目的別キャリアアップ戦略

この記事を読めば、こんな疑問が解決します!

  • 合格率15%のST試験の本当の難易度と、PM試験との決定的な違い
  • SIerから社内SEへの転職で有利になる理由と、年収へのインパクト
  • 最難関「午後II論文」を、実務経験(PMや開発)で突破するための対策法
  • 中小企業診断士やMBAとの違いと、費用対効果の観点からの比較
  • 合格に必要な勉強時間と、最短で合格するための学習ロードマップ

この記事を書いた人(マサトシ)

マサトシ

マサトシ(詳細プロフィールはこちら

SIerでの開発・保守経験を経て、金融、外資系、人材サービスなど計4社の事業会社で社内SEとして約20年にわたりキャリアを築いてきました。インフラ、アプリ、ヘルプデスクから部門長まで幅広く経験し、現在は採用業務にも携わっています。社内SEの本音や転職・キャリアアップのポイントなど、実務者だからこそわかる現場情報をお届けします。

結論:ITストラテジストは、社内SEが「経営視点」を獲得する強力な武器

ITストラテジストは社内SEが「経営視点」を獲得する強力な武器。技術・現場経験を「キャリアの増幅器」を通して戦略家・経営視座へと昇華させる図。ST取得をおすすめする人(SIerからの転職、CIO志向、最上流工程志向)と、他の資格(PM、SA)を検討したほうが良い人の比較をイラストで解説。

結論として、ST試験は、技術と現場を理解するエンジニアが、経営層の視座を身につけ、ITで事業を構想する「戦略家」へとキャリアを昇華させるための、非常に強力な武器となります。
資格はゼロから専門家を生むものではなく、あなたの既存の経験価値を公的に認証し、市場に対して可視化・増幅させる「キャリアの増幅器」として機能します。

ただし、その性質上、挑戦すべき人を選ぶ上級者向けの試験でもあります。まずは、あなたがどちらのタイプに当てはまるか確認してみてください。

👍 ITストラテジスト試験(ST)の取得をおすすめする人

  • SIer/SESから、好待遇・上流工程の社内SEへの転職を成功させたい方
  • 将来的に、ITコンサルタントやCIO/CTOといった経営層に近い立場でキャリアを築きたい方
  • 「どう作るか(How)」だけでなく、「何を・なぜ作るか(What/Why)」という最上流工程に携わりたい方

⚠️ 他の資格を検討したほうが良いかもしれない人

  • プロジェクトを計画通りに完遂させる「実行」のプロフェッショナルを目指したい方(PM試験がおすすめ)
  • システムの技術的な全体設計(アーキテクチャ)を極めたい方(システムアーキテクト試験がおすすめ)
  • 経営全般には関心がなく、特定の技術分野のスペシャリストとしてキャリアを歩みたい方

もしあなたが前者であれば、ST試験への挑戦はキャリアの可能性を大きく広げるでしょう。その理由を、詳しく解説します。

そもそもITストラテジスト試験とは?経営とITを繋ぐ「CIO候補」の証明

ITストラテジスト試験(ST)とプロジェクトマネージャ試験(PM)の違いと役割の比較図。STは「戦略策定」を担い、目的地(市場)を決める「Why/What」の航海士。PMは「プロジェクト実行」を担い、船を安全に進める「How/When」の船長。両者が経営とITを繋ぐ架け橋であることをイラストで解説。

ST試験は、単なるIT知識を問う試験ではありません。
企業のCIO(最高情報責任者)[1]やITコンサルタントに求められる、経営とITを結びつける戦略的思考力を国家が認証する、キャリアパスの頂点に位置づけられる資格です。

①資格の核心:経営課題を解決する「午後II論文」が価値の源泉

ST試験の価値を最も象徴するのが、最終関門である午後IIの論述式試験(論文)です。
この試験は、受験者自身の実務経験を基に、「ある企業の経営課題に対し、あなたがITストラテジストとして、どのような事業やサービスを構想し、経営層に提案するか」を2,000~3,000字の論文形式で記述させます。

この論文試験は、大多数の受験者をふるい落とす「グレートフィルター」として機能しています。
経営視点のない単なる技術者や、実務経験のない者が合格することは事実上不可能です。つまり、合格者=ITを活用して事業を創造・改革できる、信頼に足る戦略家であることが担保されるのです。

②PM試験との違い:プロジェクトの「Why(なぜ)」を構想する役割

プロジェクトマネージャ(PM)試験との違いを理解すると、ITストラテジストの役割がより明確になります。
プロジェクトを一つの航海に例えるなら、それぞれの役割は以下のようになります。

役割 担当フェーズ 責任範囲
ITストラテジスト(ST) 戦略策定 Why / What(なぜ、何をやるのか)
目的地(市場)を決める航海士
プロジェクトマネージャ(PM) プロジェクト実行 How / When(どうやって、いつまでに)
船を安全に進める船長

PMが「実行(How)」のプロであるのに対し、STはプロジェクトが始まる前の、より上流の「戦略策定(What/Why)」を担うプロなのです。

ITストラテジスト試験の難易度:合格率15%の壁を構成する4つの関門

ITストラテジスト試験の難易度を示す図。合格率15%(実質合格率約10%)という高い壁と、それを構成する4つの関門(午前I、午前II、午後I記述式、午後II論文式)をイラストで解説。各段階で受験者が脱落していく厳しい試験構造を視覚化。

ST試験は、PM試験と並び情報処理技術者試験の最難関です。
その難易度は、単に合格率の低さだけでなく、思考力の深さを問う試験構造にあります。ここでは、その難しさの実態に迫ります。

①客観的データで見る難易度:揺るぎない「15%の壁」

IPAの公式統計によると、ST試験の合格率は近年、14%~15%という範囲で驚くほど安定して推移しています(令和5年度秋期:14.8%、令和6年度春期:15.8%)。
この揺るぎない「15%の壁」は、試験が相対評価ではなく、絶対的な能力基準に基づいていることの証明です。

さらに、受験率は約70%であり、約3割の応募者が受験を断念しています。
この「隠れた脱落率」を考慮すると、応募者に対する実質的な合格率は約10%程度となり、これが最難関と言われる所以です。

②試験の構造:知識と戦略的思考力を問う4段階の評価基準

ST試験は、1日で4つの試験を連続して受験する必要があり、各パートで基準点を満たさなければ、その時点で不合格となる厳しい選抜プロセスです。

試験区分(時間) 形式 合格基準 主な内容
午前I(50分) 多肢選択式 60%以上 応用情報技術者試験レベルの幅広いIT基礎知識
午前II(40分) 多肢選択式 60%以上 経営戦略やシステム戦略中心の専門知識
午後I(90分) 記述式 60%以上 長文事例に基づく事業環境分析・戦略立案能力
午後II(120分) 論述式(論文) Aランク 実務経験に基づく事業構想・提案能力

社内SEが取得する価値は?キャリアを飛躍させる3つの具体的メリット

社内SEがITストラテジスト試験を取得する3つの具体的メリット。1.キャリアの選択肢拡大(ITコンサルや事業企画など高年収求人への道)、2.社内での発言力向上(経営層と同じ言語で議論しROI/KPIを語る)、3.人脈形成(合格者コミュニティJISTAへの参加権による視座向上)を図解

厳しい試験を乗り越えた先には、どのような未来が待っているのでしょうか?
ここでは、社内SE(または社内SEを目指す方)にとって直結する3つの具体的なメリットを解説します。

メリット1:キャリアの選択肢拡大(転職市場での圧倒的差別化)

資格は、あなたの戦略的思考力を客観的に証明する強力な武器です。
特にSIerから人気企業の社内SEへの転職を目指す場合、ST合格は書類選考において「単なる作業員ではなく、企画ができる人材」であることの決定的な証明になります。

企業側は「技術はわかるが経営視点がない社内SE」を懸念しています。ST試験はその懸念を払拭する最強のカードとなり、ITコンサルタントや事業企画といった高年収ポジションへの道も開きます。

実際の求人例

例:大手ITコンサルティングファームのDXコンサルタント求人
(2025年10月時点の求人情報例)

  • 業務内容:顧客企業の経営課題解決に向けたIT戦略の策定・実行支援
  • 歓迎要件:ITストラテジスト、中小企業診断士等の資格保有者
  • 提示年収:800万円~1,600万円

メリット2:社内での発言力向上(経営層と対等に議論できる)

社内SEとして「もっと経営に近い立場でITの価値を提案したい」と感じたことはありませんか?
ST試験の学習プロセスを通じて、財務諸表の読み解き方やマーケティング戦略、法務知識などを体系的に学びます。

これにより、あなたの提案は単なる「技術の話」から、「事業の成長にどう貢献するか(ROI[3]やKPI[4])」という経営層と同じ言語(ビジネスの言葉)で語れる、説得力のある戦略提言へと変わります。
結果として、社内での発言力や影響力が格段に向上するでしょう。

メリット3:人脈形成(合格者コミュニティJISTAへの参加権)

資格取得者だけが享受できるユニークなメリットとして、日本ITストラテジスト協会(JISTA)への入会資格があります。
JISTAは、IT戦略に関する情報交換や相互研鑽を通じて、会員の実務能力向上と人脈形成を図ることを目的とした団体です。

質問者
質問者
社外の人脈って、そんなに重要なんですか?

マサトシ
マサトシ
極めて重要です。社内SEはともすると「井の中の蛙」になりがちです。他社の優秀なコンサルタントやCIOクラスの人材と議論し、知的な刺激を受けることは、あなたの視座を一気に引き上げる貴重な機会になりますよ。

これにより、自社内では得難い交流が可能となり、長期的なキャリア形成において計り知れない価値を持つ資産となります。

【徹底比較】他の難関資格との違いから見る、ITストラテジストの独自価値

ITストラテジストの価値をより深く理解するために、関連する他の難関資格と比較してみましょう。

中小企業診断士との違い:ITに特化した経営コンサルタント

中小企業診断士も経営戦略を扱う国家資格ですが、その焦点が異なります。

中小企業診断士 ITストラテジスト(ST)
専門領域 経営全般(財務・法務・人事など) ITを活用した経営戦略
難易度 非常に高い(合格率4%程度) 高い(合格率15%程度)

両者は非常に親和性が高く、「ダブルライセンス」として取得することで、ITと経営の両面に精通した、極めて市場価値の高い専門家になることができます。

MBAとの違い:圧倒的なコストパフォーマンス

経営を学ぶという点では、MBA(経営学修士)[2]も選択肢になりますが、投資対効果の観点では大きな違いがあります。

MBA(国内大学院の例) ITストラテジスト(ST)
種別 学位 国家資格
投資(費用) 約200万~400万円
(入学金、授業料等)
約3万円
(受験料7,500円+書籍代等)
投資(時間) 約1,500時間~
(2年間、平日夜間・土日)
数百時間
(300~500時間程度)

※国内MBAの一般的な学費・標準修業年限(2年)およびST試験の受験料・標準学習時間より算出(複数情報源に基づく目安)

ITを軸とした経営キャリアを目指すのであれば、ST試験はMBAに比べて圧倒的に低コスト・短時間で、より直接的な専門性を証明できる、費用対効果の非常に高い自己投資と言えます。

【合格率15%を突破へ】ITストラテジスト試験の現実的な勉強方法

合格率15%を突破するためのITストラテジスト試験の現実的な勉強方法。応用情報合格レベルから標準6ヶ月・300時間の学習ロードマップとスケジュールを図解。合格基準(全区分60点以上・論文Aランク)と、午前I免除から午後II論文対策(4ステップ)までの4つの学習フェーズごとの対策ポイントを詳細に解説

ITストラテジスト試験は難関ですが、正しい戦略と計画があれば、多忙な社内SEでも独学での合格は十分に可能です。
ここでは、標準6ヶ月・300時間の学習ロードマップに基づき、具体的な進め方を解説します。

学習の基本戦略:標準6ヶ月・300時間のロードマップ

本試験に挑戦するにあたり、応用情報技術者試験(AP)レベルの知識は不可欠なスタートラインです。
このレベルの知識がなければ、経営戦略の基礎用語や、午後試験の長文事例の読解すら困難でしょう。

学習時間の目安としては、AP合格レベルの方でさらに300時間程度が必要とされています。
これは、平日1時間・休日5時間の学習を約半年間継続するイメージです。特に、後述する「午後II論文」の対策には多くの時間を要するため、長期的な計画が必要です。

6ヶ月学習スケジュール

  • フェーズ1(6~4ヶ月前):基礎固め
    午前I・IIの知識習得。週末の参考書学習+平日のスキマ時間で過去問演習を習慣化します。
  • フェーズ2(3~2ヶ月前):応用力養成
    午後Iの記述対策を開始。自身の経験から論文ネタを3~4つ選定し、分析を始めます。
  • フェーズ3(1ヶ月前):集中演習
    午後II論文に完全シフト。時間を計って書き上げる練習を繰り返します。

おすすめ参考書

  • 『ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト』(TAC出版):広範な知識を網羅した総合書
  • 『ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集』(アイテック):論文対策の決定版

合格基準と4つの学習フェーズ

学習は4つのパートで構成されており、それぞれに特化した対策が効率的な学習の鍵です。合格基準は全区分で60点以上(論文はAランク)です。

フェーズ1:午前I対策 ― 「免除」が最強の戦略

午前I試験は、応用情報合格による免除制度を最大限に活用するのが最善の戦略です。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たすことで、2年間受験が免除されます。

「免除」の条件

  • 応用情報技術者試験に合格する
  • 他の高度試験(レベル4)に合格する
  • 他の高度試験の「午前Ⅰ試験」における基準点以上の取得

免除資格がない場合は、「ITストラテジスト試験ドットコム」等の過去問演習で正答率9割を目指しましょう。

フェーズ2:午前II対策 ― 過去問の「解説」を読み込む

午前IIには免除制度がありません。ここでは特に以下の分野が重要になります。

  • システム戦略:情報システム戦略の立案手法など
  • 経営戦略マネジメント:マーケティング、財務、経営管理など
  • 法務:契約、知財、コンプライアンスなど

過去問演習が中心となりますが、答えを覚えるだけでなく、解説を読み込んで「用語の意味」と「経営的な文脈」を理解することが重要です。

フェーズ3:午後I対策 ― 経営課題の抽出

午後Iは、長文の事例から本質的な経営課題を抽出し、簡潔に記述する能力が問われます。
IPAが公開している「採点講評」を読み込み、「どのようなキーワードや論理構成が評価されるのか」という解答の型を学ぶことが不可欠です。

フェーズ4:午後II対策 ― 論文突破の4ステップ

やはり論文が最大の不安です…。PM試験の論文とは違うんですよね?
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
その通りです。PM論文が過去の「実行」経験を問うのに対し、ST論文は未来に向けた「構想・提案」能力を問います。ですが、社内SEやPMの経験は、その構想を具体化する上で強力な武器になりますよ。

論文対策は、以下の4ステップで進めるのが王道です。自己流は事故の元です。

step
1
合格論文の「型」を脳にインストールする

まずはおすすめ参考書で、合格レベルの論文の基本的な構成や論理展開のパターンを徹底的に読み込みます。
「私はこう考え、こう分析し、こう提案した」というST特有の語り口を模倣することから始めましょう。

step
2
自身のPM経験を「経営課題」へ昇華させる

自身の業務経験を棚卸ししますが、単なる「プロジェクトの苦労話」では不十分です。
「そのプロジェクトが経営にどう貢献したか」「どんな経営課題を解決するために立ち上がったか」という視点でエピソードを再構成し、3~4つの「ネタ」を準備します。

step
3
「骨子」で勝負の8割は決まる

論文を書き始める前に、必ず詳細な構成案(骨子)を作成する習慣をつけます。
いきなり書き出したい衝動を抑え、設問の要求に対し論理が通っているか、設計図を完璧にすることが合格への近道です。

step
4
「手書き」という物理的な壁を越える

PC慣れした現代人にとって、2時間で3,000字を手書きするのは過酷な試練です。
時間を計って実際に手を動かし、漢字を思い出す訓練と、最後まで書き切る筆力を養うトレーニングを繰り返してください。

DX・AI時代に、なぜ「ITストラテジスト」の価値はますます高まるのか?

DXやAIが浸透する現代において、人間の戦略家の価値は揺らぐのでしょうか?
結論は「むしろ、その重要性は増す一方」です。AIには代替できない、ITストラテジストならではの中核的価値が存在します。

AIには代替できない「0→1」の事業構想力

AIは、過去の膨大なデータから最適なパターンを導き出すことは得意です。
しかし、まだ市場に存在しない、全く新しいビジネスモデルやサービスをゼロから構想することはできません。

AIにはできないSTの役割

  • 0から1を生み出す創造性:過去の延長線上にない革新的なビジネスモデルの創出
  • 複雑な合意形成:利害の異なるステークホルダー(経営層、現場、顧客)間の調整と説得
  • 最終的な事業責任:不確実な未来に対する意思決定と、その結果に対する責任

データに基づいたAIの提案を参考にしつつも、最終的なリスクを引き受け、事業としての意思決定を下す。この重責を担う覚悟こそが、リーダーたるITストラテジストの価値の源泉です。

まとめ:ST試験への挑戦は、あなたのキャリアを「事業家」へと引き上げる自己投資

本記事では、ITストラテジスト試験の難易度、価値、そして具体的な学習戦略について解説してきました。

合格率約15%、そして経営レベルの構想力が問われる論文という高い壁。
その道のりは、決して容易なものではありません。

しかし、その困難さゆえに、この資格はあなたの戦略的思考力を客観的に証明する、圧倒的な信頼性を持ちます。
その学習プロセスは、あなたの現場経験を経営の視座へと引き上げ、技術とビジネスを繋ぐ本質的な能力を授けてくれるでしょう。

もしあなたが、単なるITの専門家で終わるのではなく、ITを武器に事業を構想し、企業の未来を創る「事業家」としてのキャリアを本気で目指すなら、ITストラテジスト試験への挑戦は、確かな価値をもたらす、有益な自己投資となるでしょう

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FAQ:ITストラテジスト試験の難易度や勉強法に関するよくある質問

Q. PM経験しかなくても戦略論文は書けますか?

はい、書くことは十分に可能です。
論文で評価されるのは、戦略立案そのものの経験ではなく、ご自身のPM経験を戦略的な視点で再構成して記述できるかです。
重要なのは、「なぜそのプロジェクトが必要だったのか(事業背景)」と「プロジェクトの結果、事業にどのような価値がもたらされたのか(投資対効果)」という2つの視点を盛り込むことです。

Q. 社内SEの経験は論文で評価されますか?

はい、高く評価されます。社内SEの経験は論文の宝の山です。
なぜなら、社内SEは日常的に経営層や事業部門と接点を持ち、現場の課題やビジネスの目標を直接的に理解する機会が多いからです。

例えば、「現場の課題を解決するために新しいツールを比較検討し、費用対効果を経営に説明して導入した」といった経験は、そのままIT戦略立案の優れた事例となります。

Q. 論文のネタになるような華々しい経験がありません。

論文で求められるのは、プロジェクトの規模や成功の大きさではありません。
試験官が評価しているのは、「課題を構造的に捉え、論理的な解決策を導き出し、それを他者に説明できる能力」です。
たとえ失敗したプロジェクトであっても、「その失敗から何を学び、次にどう活かすか」という分析と提言ができれば、成功体験よりも高く評価されることさえあります。

Q. 独学で合格を目指す場合、おすすめの参考書は?

多くの合格者が、以下の定番リソースを組み合わせて学習しています。

  • 総合参考書:『ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト』(TAC出版)
  • 論文対策専門書:『ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集』(アイテック)
  • Webツール:「ITストラテジスト試験ドットコム(旧:過去問道場)」

まずはこれらの定評ある教材で学習を進め、必要に応じて他の教材を追加するのが効率的です。

Q. SIerから社内SEへの転職に有利になりますか?

極めて有利です。
社内SE、特に上流工程や企画職の採用では、技術力以上に「事業への貢献意欲」や「企画・提案力」が重視されます。
ST試験の合格は、あなたが単なる開発者ではなく、経営視点を持ってITを扱える人材であることの客観的な証明となり、実務未経験の「企画職」への強力な切符になります。

Q. 2026年度からCBT化されると聞きましたが、難易度は変わりますか?

IPAの公式発表によると、難易度や評価の基準は維持される見込みです。
ただし、論文を手書きではなく、会場のPCでキーボード入力する方式に変わります。
そのため、タイピング速度に不安がある方は、キーボードでの長文入力に慣れておくことを推奨します。(根拠:IPA:応用情報技術者試験等のCBT方式での実施について


この記事で使われている専門用語の解説


1. CIO (Chief Information Officer)
最高情報責任者。経営戦略の一部としてIT戦略を立案・実行する責任を持つ経営幹部。
2. MBA (Master of Business Administration)
経営学修士。大学院の経営学研究科が授与する学位。
3. ROI (Return on Investment)
投資対効果。投じた資本に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標。
4. KPI (Key Performance Indicator)
重要業績評価指標。組織の目標達成度を定量的に評価するための指標。
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マサトシ

外資系企業や金融機関等、複数企業で社内SEとして20年以上の経験|アプリ、インフラ、PM、IT戦略策定等幅広い業務を担当|情シスの採用責任者としてキャリア採用の面接経験も多数

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