「サーバーやネットワークの構築・運用って、オンプレミスだけじゃなくてクラウドも関係あるの?」
「インフラエンジニアとしてのキャリア、社内SEではどう活かせる?将来性はあるのかな…」

現在、SIer(エスアイヤー)1やSES(エスイーエス)2といった開発ベンダーでインフラ構築・運用に携わっているあなた、あるいは既に社内SEとして自社のIT基盤を支えているあなたも、「社内SEのインフラ担当」という役割について、具体的な業務範囲や求められるスキル、キャリアパスに関心をお持ちではないでしょうか。
社内SEのインフラ担当は、単にサーバーを立てるだけの仕事ではありません。それは、企業の戦略、効率性、そして革新を支える根幹であり、ビジネス活動全体を支えるIT基盤を、安定的かつ効率的に、そして安全に提供し続ける専門職です。
この記事では、社内SEの「インフラ担当」という、まさに企業の屋台骨を支える仕事に焦点を当て、その具体的な仕事内容から求められるスキル、キャリアパスまで、20年の現場経験を持つ私がリアルな視点で網羅的に解説します。
この記事を読めば、こんな疑問が解決します!
- 社内SEインフラ担当の戦略的な役割と具体的な業務範囲
- サーバー、ネットワーク管理のリアルな仕事内容
- インフラ担当に求められる専門的なテクニカルスキルとヒューマンスキル
- インフラ担当としてのキャリアパスと将来性
社内SE「インフラ担当」の役割と業務範囲
インフラ・セキュリティ・クラウド担当の全体像と比較
この記事では「インフラ担当」の仕事に絞って深掘りしますが、他の技術職(セキュリティ、クラウド)との違いや連携について知りたい方は、まずはこちらのまとめ記事からご覧いただくのがおすすめです。
「インフラ担当って、なんだか地味で古臭いイメージ…」
もしかしたら、そんな風に思っていませんか? とんでもない! インフラ担当は、会社のビジネス活動全ての土台を支える、いわば「縁の下の力持ち」であり、企業の心臓部を握る超重要ポジションなんです。ここでは、その守備範囲の広さと、ミッションの重要性について見ていきましょう。
インフラ担当の守備範囲はこんなに広い!
社内SEのインフラ担当者は、企業のITシステムが安定して稼働するための「土台」となるITインフラ全般を専門に扱うエンジニアです。その守備範囲は非常に広く、物理的な機器からクラウドサービスまで多岐にわたります。
これらのITインフラは、社員が日常業務で使う様々なアプリケーションやサービスを動かすための根幹。まさに、企業のビジネス活動を足元から支える大黒柱と言える存在です。
インフラ担当の仕事内容と必須スキル
「じゃあ、具体的には毎日どんなことをしているの?」
インフラ担当の役割は、ITインフラのライフサイクル、つまり「企画」から「廃棄」まで全てのフェーズに関わることです。ここでは、その具体的な仕事内容と、それらを遂行するために必要なスキルセットを合わせて解説します。
ライフサイクルで見る!インフラ担当の具体的な業務
- 企画・設計 (Planning & Design)
ITインフラ導入の最も上流にあたるフェーズです。ビジネス部門の「新しいシステムが欲しい」といったニーズを技術的な要件に落とし込みます。ここでは、可用性、拡張性、パフォーマンス、セキュリティ、コストを総合的に考慮したアーキテクチャを設計する高度な能力が求められます。 - 構築・導入 (Construction & Deployment)
設計図を元に、実際にインフラを形にするフェーズです。サーバーやネットワーク機器の設置、OSやミドルウェアの設定を行います。近年では、AWSやAzureといったクラウド7上にサーバー(IaaS)を構築する業務も増えていますが、これはインフラ担当のコア業務の一つです。 - 運用・保守 (Operation & Maintenance)
インフラ担当の日常業務の多くを占めるのがこのフェーズです。システムのパフォーマンスや可用性を24時間365日体制で監視し、安定稼働を維持します。これには、定期的なメンテナンス(パッチ適用、アップデート)やバックアップだけでなく、システム障害の根本原因分析と是正措置の実施といった、プロフェッショナルな業務が含まれます。 - 改善・最適化と廃止・リプレイス
ただ動かすだけでなく、「より良くする」ための継続的な改善活動も重要です。既存システムの課題を分析し、効率やコストを高める改善策を提案・実行します。また、古くなったシステムの廃棄計画を立て、新しいシステムへ安全に移行させるリプレイス8も担当します。

インフラ担当として活躍するための知識・スキルセット
インフラ担当として高いパフォーマンスを発揮するには、技術的な専門知識(テクニカルスキル)と、ビジネススキルや対人能力(ヒューマンスキル)の両方が不可欠です。
- サーバー & OS:Windows ServerやLinuxといったOSの深い知識、サーバーハードウェアの構成や管理能力は基本中の基本です。
- ネットワーキング:TCP/IP、DNS、DHCPといったプロトコルの理解、ルーターやスイッチ、ファイアウォールなどの設計・構築・運用スキルが求められます。
- 仮想化技術:VMwareやHyper-Vなどのハイパーバイザーに関する習熟は、現代のインフラ管理において必須と言えます。
- クラウドコンピューティング:特にIaaS(仮想サーバー、ストレージ等)を中心とした、インフラを構成するための基本的な知識と経験がますます重要になっています。
- セキュリティ:ファイアウォール、IDS/IPS、VPNといったインフラレイヤーのセキュリティ機器に関する知識と運用経験は不可欠です。
- スクリプティング / 自動化:PowerShellやPythonなどを用いて、定型業務を自動化するスキルは、業務効率を飛躍的に向上させます。
- 高度な問題解決能力:複雑な技術的問題を診断し、根本原因を特定し、効果的な解決策を実行する論理的思考力が求められます。
- 効果的なコミュニケーション能力:技術者以外のユーザーに技術的な解決策を分かりやすく説明し、彼らのニーズを正確に理解する能力が重要です。
社内SE「インフラ担当」ならではの魅力とキャリア
「地味な仕事だと思ってたけど、意外と面白そう。でも、キャリアとしてはどうなんだろう?」
そう思いますよね。インフラ担当の仕事には、特有のやりがいと共に、実は潰しが効く、将来性豊かなキャリアパスが拓かれています。
やりがい:企業のIT基盤を支える安定感と達成感
最大のやりがいは、企業のITシステム全体の安定稼働を自分の手で支え、ビジネスの継続に直接貢献しているという実感を得られることでしょう。ネットワークが繋がらなければ多くの業務が止まってしまうように、インフラは企業活動のまさに土台です。その土台を守り、改善していくことに大きな責任と誇りを感じられます。
大変さ:障害時のプレッシャーと夜間・休日対応
一方で、ITインフラは24時間365日稼働していることが前提となるため、障害発生時には昼夜を問わず迅速な対応が求められ、大きなプレッシャーがかかります。また、システムのメンテナンス作業などは、業務への影響を最小限に抑えるために、夜間や休日に実施されることが一般的です。

キャリアパスと将来性
社内SEのインフラ担当として経験を積むことで、多様なキャリアパスが拓けます。
- インフラスペシャリスト:ネットワークやサーバー、仮想化といった特定の技術領域の専門性を深める道。
- ITアーキテクト:企業全体のITインフラのグランドデザインを描き、将来の技術戦略を策定する道。
- プロジェクトマネージャー:大規模なインフラ導入・更改プロジェクトを統括する道。
- クラウドエンジニア/セキュリティエンジニア:インフラの知識をベースに、より専門性の高い領域へシフトする道。
- ITコンサルタント:インフラの専門知識を活かして、他社のIT基盤構築を支援する道。

まとめ:企業の成長を足元から支える、インフラ担当の重要性
ここまで、社内SEの「インフラ担当」について、その具体的な仕事内容から求められるスキル、キャリアパスまで幅広く解説してきました。
社内SEのインフラ担当は、目立たない存在かもしれませんが、企業のITシステム、ひいてはビジネス活動全体を根底から支える、極めて重要で専門性の高い仕事です。システムの安定稼働という「守り」の役割だけでなく、新しい技術を取り入れてIT基盤を進化させていく「攻め」の側面も持ち合わせています。
開発ベンダーのインフラエンジニアとは異なり、自社のビジネスに直接貢献している実感を得やすく、長期的な視点でITインフラ全体に関われる点が大きな魅力です。変化の速い技術トレンドを追い続け、幅広い知識とスキルを磨き続ける努力は不可欠ですが、その分、大きなやりがいと成長が得られる職種と言えるでしょう。
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FAQ:社内SE「インフラ担当」についてよくある質問
Q1. 社内SEのインフラ担当は、具体的にどのようなITインフラを扱いますか?
A1. 主に、企業のITシステムが稼働するための基盤となるサーバー(物理・仮想)、ネットワーク(LAN・WAN・VPN・無線)、ストレージ、データセンター設備、ファイアウォールなどのセキュリティ機器などを扱います。
Q2. インフラ担当の社内SEは、PCのセットアップやヘルプデスク業務も行うのですか?
A2. 企業規模や組織体制によります。厳密にはPCセットアップやヘルプデスクはインフラ業務と区別されますが、特に中小企業や情報システム部門の人数が少ない企業では、インフラ担当者がこれらの業務を兼任することも珍しくありません。大企業では専門のITサポートチームが担当することが一般的です。
Q3. オンプレミス環境の経験しかないのですが、社内SEのインフラ担当として通用しますか?クラウドの知識は必須ですか?
A3. オンプレミスの経験は非常に価値があります。その上で、クラウド技術の基礎知識や学習意欲があれば、十分に通用する可能性はあります。多くの企業がクラウドへの移行を進めているため、クラウドに関する知識・スキルは今後ますます重要になりますが、入社後に学ぶ機会を提供している企業もあります。面接などで企業のインフラ環境や研修制度について確認すると良いでしょう。
Q4. 社内SEのインフラ担当のキャリアパスにはどのようなものがありますか?
A4. インフラ技術の専門性を深めるスペシャリスト、クラウド技術に特化したクラウドエンジニア、企業全体のIT基盤を設計するITアーキテクト、大規模なインフラプロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーなどが考えられます。また、マネジメントスキルを磨けば、情報システム部門の管理職への道も開けます。
Q5. インフラ担当の社内SEは、夜間や休日の対応が多いのでしょうか?
A5. システムのメンテナンス作業や予期せぬ障害対応のために、業務時間外や休日に対応が必要になることはあります。特に24時間365日稼働が求められるシステムを担当する場合や、オンコール体制がある場合はその可能性が高まります。ただし、企業やチームの体制、担当するシステムの重要度によって頻度は大きく異なります。
この記事で使われている専門用語の解説
- 1. SIer(エスアイヤー)
- システムインテグレーターの略。顧客の業務内容を分析し、課題解決のためのシステムの企画、構築、運用サポートなどを一括して請け負う企業のこと。
- 2. SES(エスイーエス)
- システムエンジニアリングサービスの略。ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用など特定の業務に対して、エンジニアの技術力を提供する契約形態のこと。
- 3. VMware
- サーバー仮想化ソフトウェアの市場で高いシェアを誇る製品、およびその開発会社名。物理サーバー上に複数の仮想サーバーを構築・実行できる。
- 4. Hyper-V
- マイクロソフト社が提供する仮想化技術。Windows Serverに標準で搭載されており、サーバー仮想化を実現する。
- 5. VPN (Virtual Private Network)
- 仮想プライベートネットワーク。インターネットなどの公衆網を利用して、あたかも専用線のように安全な通信経路を仮想的に構築する技術。リモートワークなどで利用される。
- 6. ファイアウォール
- ネットワークの「防火壁」。あらかじめ設定したルールに基づき、不正なアクセスや通信を検知・遮断するセキュリティシステム。
- 7. クラウド
- インターネット経由で、サーバー、ストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを利用する形態のこと。自社でインフラを保有・管理する必要がない。
- 8. リプレイス
- 古くなった、あるいは問題のある既存のシステムや機器を、新しいものに置き換えること。