社内SEのキャリアにおける情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の価値と役割

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情報処理安全確保支援士(RISS)とは?|難易度・年収・維持費の真実

最近、セキュリティインシデントのニュースが後を絶たないな…。社内SEとして、もっと専門性を高めないと、うちの会社も危ないかもしれない…。
質問者
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質問者
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「情報処理安全確保支援士」って資格がすごいって聞くけど、難易度も高いし、維持費もかかるって本当?そこまでして取得する価値って、社内SEにあるんだろうか…。

応用情報技術者試験(AP)にも合格し、社内SEとして順調にキャリアを積んできたあなた。
クラウド化やDX推進が加速する一方で、増大するサイバーセキュリティの脅威に対し、自身のスキルに限界を感じ始めていませんか?

「専門家」として次のステージに進むべきか。
その答えとして「情報処理安全確保支援士(Registered Information Security Specialist, 以降、支援士またはRISSと表記)」を意識しつつも、圧倒的な難易度やコストに見合う価値があるのか、確信を持てずにいるかもしれません。

この記事では、支援士がどのような資格であり、社内SEのキャリアをいかにして「代替不可能な価値」へと引き上げるのか、客観的なデータと具体的な学習戦略を交えて徹底解説します。

記事を読めば、支援士への挑戦が、市場価値を劇的に高めるための最も賢明な自己投資であると確信できるはずです。

なお、この記事ではセキュリティの最高峰資格である「支援士」に特化して解説しますが、社内SEとしてのキャリア全体を見据えたスキル戦略や、他の資格との優先順位について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事 社内SEの市場価値を上げる資格とスキル|目的別キャリアアップ戦略

この記事を読めば、こんな疑問が解決します!

  • 支援士が、他の資格と一線を画す「士業」である理由
  • 社内SEが取得することで得られる、年収・キャリアにおける3つの絶大なメリット
  • 合格率約20%の超難関を突破するための、現実的な学習戦略
  • 高額な維持コストは、本当に「元が取れる」のか?
  • 国際資格CISSP®との違いと、どちらを目指すべきか

この記事を書いた人(マサトシ)

マサトシ

マサトシ(詳細プロフィールはこちら

SIerでの開発・保守経験を経て、金融、外資系、人材サービスなど計4社の事業会社で社内SEとして約20年にわたりキャリアを築いてきました。インフラ、アプリ、ヘルプデスクから部門長まで幅広く経験し、現在は採用業務にも携わっています。社内SEの本音や転職・キャリアアップのポイントなど、実務者だからこそわかる現場情報をお届けします。

結論:情報処理安全確保支援士は、社内SEが市場価値を最大化するための「有力な選択肢」

結論として、支援士は、「専門性を高め、市場価値を上げたい」と考える社内SEにとって、非常に強力な選択肢の一つです。
ただし、難易度と維持コストから、万人におすすめできる資格ではありません。まずは、自身がどちらのタイプに当てはまるか確認してください。

⭕️ 支援士(RISS)の取得を強く推奨する社内SE

  • セキュリティ分野の専門家として、キャリアの軸を明確に定めたい
  • 将来的に、より条件の良い企業への転職や、高年収を目指したい
  • 学習意欲が高く、継続的な知識のアップデートに投資できる

🔺 支援士(RISS)より他の道を検討すべき社内SE

  • セキュリティよりも、マネジメントやIT企画など他の分野に関心がある
  • 資格取得や維持にかかる金銭的・時間的コストを避けたい
  • 現在の職場で安定して働き続けることを最優先に考えている

もし前者に当てはまるなら、支援士への挑戦はキャリアを大きく飛躍させる可能性があります。その理由を、詳しく解説します。

そもそも情報処理安全確保支援士とは?「情報セキュリティ資格」の最高峰

情報セキュリティ資格の最高峰である国家資格「情報処理安全確保支援士」の価値を示す画像。法律に基づく重い責任(士業)と、厳しい試験・維持のフィルターによって裏打ちされた圧倒的な信頼性を表現している

支援士の真価を理解するには、まずその特異な立ち位置を知る必要があります。
挑戦してきた応用情報などとは根本的に異なる「士業[1]」としての重みと、難易度の実態を解説します。

①国家資格としての「士業」:法律に基づく重い責任

なぜ支援士は「士業」と呼ばれるのでしょうか。
理由は、法律に裏付けされた重い責任が伴うからです。

「名称独占」と「業務独占」の違い

まず理解すべき点は、支援士が「名称独占資格」であることです。
「情報処理安全確保支援士」という名称を、資格登録者以外が使用することを法律で禁じています

弁護士のように「資格がないと特定の業務ができない(業務独占資格)」わけではありません。
しかし、名称独占こそが、資格保有者が一定の基準と規律の下にあることを社会に示す重要なシグナルとなります。

(出典:e-Gov法令検索「情報処理の促進に関する法律」第二十条

法律に基づく3つの重い義務

支援士は「情報処理の促進に関する法律」に基づき、登録者に以下の重い義務を課します。

  • 信用失墜行為の禁止(第二十一条):専門家としての品位を保ち、資格全体の信用を損なう行為の禁止
  • 秘密保持義務(第二十二条):業務で知り得た秘密の保持(違反時は罰則あり)
  • 継続的な講習の受講義務(第二十四条):知識・スキルを最新状態に保つための定期的な講習受講

(出典:e-Gov法令検索「情報処理の促進に関する法律」

この厳格なフレームワークが、支援士を単なる技術者ではなく、社会的に信頼されたプロフェッショナルたらしめています。

②試験の構造:知識と実践力を問う3段階の評価

支援士試験は、知識の広さと深さ、実践的な思考力の全てを問う多段階の構成です。

午前Ⅰ試験:広範なIT基礎知識と「免除制度」

午前Ⅰ試験は、50分で30問の多肢選択式問題が出題されます。内容は応用情報の午前問題とほぼ同等レベルです。
この午前Ⅰ試験には、以下のいずれかの条件を満たすことで、2年間受験が免除される制度があります。

  • 応用情報技術者試験の合格
  • 他の高度試験(レベル4)の合格(例:ネットワークスペシャリスト、プロジェクトマネージャ等)
  • 他の高度試験の「午前Ⅰ試験」における基準点以上の取得

これにより、最も対策に時間を要する専門分野(午前Ⅱ・午後)にリソースを集中させることが可能です。

(出典:IPA「高度試験、情報処理安全確保支援士試験の一部(午前I試験)免除制度」

午前Ⅱ試験:技術を「判断」できるレベル4の専門性

午前Ⅱ試験は、40分で25問の多肢選択式問題が出題されます。
ここで問われる「スキルレベル4」とは、単に用語を知っているだけでなく、「自組織のビジネスに合わせて技術を最適化・指導できる」レベルを指します。

例えば、「SAMLやOIDC(異なるサービス間でログイン情報を安全に連携する仕組み)[4]の違いを理解し、適切な場面で選択できるか」や「サイドチャネル攻撃などの高度な攻撃手法への対策原理を説明できるか」といった、実務における技術的判断力が深く問われます。

午後試験:実践的な問題解決能力と論述力

合否を分ける最大の関門となるのが、記述式で行われる午後試験です。
150分という試験時間の中で、4問中2問を選択して解答します。

数ページにわたる長文のシナリオを読み解き、セキュリティ上のリスクを特定した上で、設問の指示に従って具体的な対策や根拠を論理的に記述しなければなりません。

単なる暗記知識だけでは対応できず、深い技術的理解に加え、高度な読解力や問題解決能力、指定された文字数内で要点を的確に表現する「国語力(論述力)」が総合的に試されます。

③【難易度】「入り口の狭さ」と「維持の厳しさ」が生む圧倒的な信頼

支援士が市場から高く評価される理由は、その取得と維持のハードルの高さ、いわば「二重のフィルター」にあります。

入り口のフィルター:合格率20%の壁

支援士試験の難易度を示す最も分かりやすい指標が合格率です。
IPAの公式統計情報によると、近年の合格率は概ね19%~22%の範囲で安定して推移しています。
難関を突破した事実は、基礎能力とセキュリティ知識が一定水準以上であることの強力な証明となります。

(出典:IPA「統計情報」

維持のフィルター:高額な登録・更新コスト

もう一つのフィルターが、合格後の「登録・更新」制度です。
資格を維持するためには、高額な費用と継続的な学習が求められます。

  • 初期登録費用:合計19,700円(登録免許税+手数料)
  • 3年ごとの更新と維持コスト:合計約140,000円~(オンライン講習×3回+実践講習×1回)

(出典:サイバーセキュリティ・ポータルサイト「国家資格「情報処理安全確保支援士」」

更新義務があるため、支援士には「ペーパードライバー」が存在しません。
「常に最新の知識を持ち、プロとして活動し続けている人材」であることが、制度的に保証されています。

社内SEが取得する価値は?キャリアを飛躍させる3つのメリット

厳しい試験を乗り越えた先に、どのような未来が待っているのでしょうか。
社内SEであるあなたのキャリアに直結する「年収」「社内評価」「将来性」の3つの観点から、具体的で強力なメリットを解説します。

メリット1:転職での価値向上(年収1,000万円超への道)

支援士の資格は、市場価値を客観的に証明する強力な武器です。

なぜなら、セキュリティスキルは目に見えにくく、企業側にとって採用リスクが高い分野だからです。
支援士資格は、「国家がその能力と倫理観(身元)を保証した人材」であることを意味します。これにより、採用側のリスクが大幅に下がり、企業は安心してあなたを高待遇で迎え入れることができます。

実際の転職市場において、「安心と信頼」という付加価値は非常に大きく、経歴書の説得力を劇的に高めます。

実際の求人例

例:大手SIerのセキュリティコンサルタント求人
(dodaより、2025年10月時点)

  • 業務内容:顧客企業へのセキュリティ診断、コンサルティング、CSIRT支援
  • 歓迎要件:情報処理安全確保支援士、CISSP®[3]等の資格保有者
  • 提示年収:700万円~1,300万円

このように、1,000万円を超えるハイクラス求人も珍しくありません。
企業が支援士資格を、実践的な問題解決能力を持つ人材の客観的な証明として、高く評価している何よりの証拠です。

メリット2:企業からの金銭的評価(維持コストは回収可能)

多くの企業は、高度な専門性を持つ人材に報奨金や手当で報います。
高額な維持費は懸念点かもしれませんが、企業が提供する金銭的インセンティブは、コストを十分に上回る可能性があります。

会社から資格手当が出るのであれば大きいですね!でも、維持費が3年で14万円もかかるって聞くと、やっぱり躊躇しちゃいます…。本当に元は取れるんでしょうか?
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
維持費は単なるコストではありません。更新講習は他社の専門家と交流する場でもあり、社外の人脈を作る貴重なコミュニティへの参加権とも言えます。コスト回収以上の価値がありますよ。

仮に月額3万円の資格手当なら、3年間で「月額3万円 × 12ヶ月 × 3年 = 108万円」の収入増になります。
維持コスト約14万円を差し引いても、90万円以上の大きなプラスになる計算です。

メリット3:キャリアの将来性(「士業」としての信頼)

目先の年収だけがメリットではありません。
「士業」という公的な信頼性が、いかにして年齢を重ねても価値が落ちない強固なキャリアを築く土台となります。

3年ごとの講習受講義務は、知識が常に最新であることを客観的に証明し続けます。
技術の陳腐化が激しいIT業界において、「学び続ける専門家」であるという国家のお墨付きは、年齢を重ねても市場価値が落ちない、極めて強靭なキャリアを築くための生命線となるでしょう。

マサトシ
マサトシ
名刺に「情報処理安全確保支援士」のロゴマークを入れられるのも地味ながら強力なメリットです。お客様からの「この人はちゃんとしている」という初期信頼が段違いになります。

【徹底比較】他のIT資格との違いから見る、支援士の独自ポジション

主要なIT資格と情報処理安全確保支援士(RISS)の違いを比較した図解。応用情報技術者試験を前提とした「頂点」としての位置づけ、技術力重視のネットワークスペシャリストに対し「国語力」が問われる性質、国際資格CISSPと比較した際の「国内」中心の活動領域と維持費用構造を視覚的に解説

数ある資格の中で、支援士はどのような位置づけなのでしょうか。
既に持っている、あるいは次に目指すであろう主要な資格と比較し、独自の価値とキャリアパスにおける役割を明確にします。

応用情報技術者試験との違い:キャリアの「前提」と「頂点」

応用情報は、ITに関する幅広い基礎知識と応用力を証明する、ITエンジニアにとっての「パスポート」のような資格です。
一方、支援士は、応用情報を「前提」とし、セキュリティという専門分野を極めた「頂点」に位置します。
キャリアパスとしては、まず応用情報で土台を固め、その上で支援士を目指すのが王道です。

ネットワークスペシャリストとの違い:「技術」か「国語」か

同じスキルレベル4の資格ですが、その性質は大きく異なります。

ネットワークスペシャリスト(NW) 情報処理安全確保支援士(RISS)
性質 「技術の問題」 「国語の問題」
求められる力 ネットワーク技術の深い知識・設計力 シナリオ読解力・論理的な対策の記述力

キャリア戦略としては、まず支援士(RISS)でセキュリティ全般の応用力と論述力を養い、その上でNWに挑戦するというルートも有効です。

CISSP®との違い:目指すキャリアの「国内/国外」

CISSP®は、米国に本部を置く非営利団体(ISC)²が認定する国際的なセキュリティ資格です。
世界中で認知されており、特に外資系企業やグローバルな環境での評価が高い資格です。

どちらを目指すべきかは、活動のフィールドと維持要件の違いで判断します。

情報処理安全確保支援士(RISS) CISSP®
維持要件 3年ごとの更新(講習受講が必須) 3年間で120CPE(継続教育単位)の取得
維持コスト 約14万円~ / 3年(講習費用) US$135 / 年(年会費)
根拠 IPA (ISC)² Japan

金銭的コストは支援士(RISS)の方が高いですが、義務講習により知識のアップデートが保証されます。
一方、CISSP®は自己学習で単位を取得する必要がある代わりに、年会費は比較的安価です。

【合格率20%を突破へ】情報処理安全確保支援士の現実的な勉強法

情報処理安全確保支援士の合格率20%突破に向けた学習ロードマップの図解。応用情報合格レベルを前提とし、必要な学習時間と教材、そして「午前I(免除推奨)」「午前II(論理的理解)」「午後(記述・国語力)」という3段階の関門攻略法を順序立てて解説している。

難関ではありますが、正しい戦略と計画があれば、合格は十分に可能です。
多忙な社内SEが最短ルートで合格を掴むための、具体的かつ効率的な学習の進め方を解説します。

学習の基本戦略:応用情報合格レベルからのスタート

大前提として、支援士試験は応用情報合格レベルの知識があることがスタートラインです。
まだ合格していない方は、まず応用情報の取得を目指すことを強く推奨します。

応用情報合格レベルの方が、さらに200時間~500時間の学習時間を確保することが一つの目安です。
1日2時間の学習を続けた場合、3ヶ月半から8ヶ月程度の期間が必要となります。

マサトシ
マサトシ
独学で合格を目指す場合、質の高い教材の選択が成否を分けます。多くの合格者が利用している定番リソースをいくつか紹介しますね。

おすすめ学習リソース

  • 教科書(インプット用)
    『情報処理教科書 情報処理安全確保支援士』(翔泳社、通称「上原本」)などが網羅性も高く、辞書的にも使えるため定番です。
  • 問題集(アウトプット用)
    IPA公式サイトで公開されている過去問題は必須です。最低でも過去5年分は繰り返し解きましょう。
  • Webツール
    「情報処理安全確保支援士試験ドットコム(旧:過去問道場)」の活用がおすすめです。スマホで手軽に午前問題の演習ができ、隙間時間の活用に最適です。

合格基準と3つの学習フェーズ

学習の詳細に入る前に、絶対に避けて通れない合格基準を確認しましょう。
情報処理安全確保支援士試験は、午前I、午前II、午後の全ての試験区分において、100点満点中60点以上のスコアを取得する必要があります。
一つでも基準点(60点)を下回れば、他が満点でもその時点で不合格(足切り)となります。したがって、苦手分野を作らず、全フェーズで確実に基準を超える対策が不可欠です。

フェーズ1:午前I対策 ― 「免除」が最強の戦略

午前Iは、テクノロジ・マネジメント・ストラテジの3分野から広範な基礎知識が問われる、応用情報技術者試験レベルの試験です。

最善の戦略は「免除」を取ることです。
午後試験の対策には膨大な時間が必要となるため、可能な限り午前Iは免除制度を利用してスキップし、リソースを温存するのが鉄則です。まだ免除資格がない場合は、直近の応用情報技術者試験に合格しておくことを強く推奨します。

免除なしで受験する場合は、「過去問道場」などのWebアプリを活用し、通勤時間などの隙間時間を使って過去問を反復しましょう。流用問題も多いため、正答率9割を安定して出せるレベルにしておくことで、本番での足切りリスクをゼロに近づけられます。

フェーズ2:午前II対策 ― 「過去問」の完全理解で突破する

午前IIは、情報セキュリティとネットワーク分野に特化した、スキルレベル4相当の専門知識が問われます。
ここでも過去問からの流用や類題が多く出題されるため、過去問演習が極めて効果的です。

ただし、「答えの丸暗記」は絶対にNGです。
「なぜその選択肢が正解で、他の選択肢はなぜ誤りなのか」を論理的に説明できるレベルまで深く理解してください。用語の定義や技術の仕組みを正確に把握していないと、少し捻られた問題や新傾向の問題に対応できず、足切りライン(60点)を割ってしまう危険性があります。

フェーズ3:午後対策 ― コンサルタント的思考の養成

合否を分ける最大の山場が、記述式の午後試験です。ここは単なる知識テストではなく、セキュリティコンサルタントとしての「思考力」と「国語力」が試されます。

午後試験の記述がどうしても苦手です…。技術力はあるつもりなんですが、なぜか点が伸びなくて。
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
技術力がある人ほど陥りやすい罠ですね。「自分の知識」で答えていませんか?午後試験は「問題文の事実」から答える「国語の問題」と割り切ると、点数が安定しますよ。

午後試験 攻略のポイント

  • 設問意図の把握:設問が「何について」「どのような立場で」「何を」求めているのかを正確に理解する
  • 解答根拠の探索:答えの根拠となる記述を、必ず問題文の中から探し出す訓練
  • 論理的な解答構成:問題文中のキーワードを使い、指定文字数内で論理的に解答を再構成する練習

独創的な解答は不要です。
あくまで問題文に書かれている事実に基づき、論理的に解答を組み立てる能力が評価されます。

AI・クラウド時代になぜ「支援士」の価値は揺るがないのか?

「SaaSを使えばインフラは不要」「レポートはAIが書く」。
そんな時代に、支援士資格で問われる知識は本当に役立つのでしょうか。
結論は「むしろ価値は増す」です。

クラウド・ゼロトラスト環境への対応力が必須

今や、社内SEの重要業務は、便利なSaaSを導入し、AWSやAzureといったクラウド基盤を管理することです。
しかし、その設定一つで重大な情報漏洩に繋がりかねません。

支援士試験では、ゼロトラスト[5]CASB[6]といった、現代のクラウドセキュリティに必須の知識が問われます。
これらの知識は、便利なツールを安全に使いこなし、自社のシステムを守る「最後の砦」として、経営層に説明責任を果たすために不可欠です。

AIには代替不可能な「判断」と「法的責任」

生成AIは、膨大なログの分析やレポート作成を効率化しますが、AIにはできないことがあります。
前例のない攻撃への戦略立案や、技術リスクとビジネスリスクを天秤にかけた最終的な意思決定です。
そして何より、AIは法的な責任を負うことができません

自動化が進むほど、複雑な状況下で説明可能な判断を下し、結果に責任を負うことができる人間の専門家の価値は増大します。

まとめ:難易度を超えて挑戦する価値のある「最強の自己投資」

本記事では、情報処理安全確保支援士という資格の特異な価値と、社内SEが取得を目指す具体的なメリット、学習戦略について解説しました。

合格率約20%、高額な維持コスト、法律に基づく重い責任。
その道のりは、決して容易なものではありません。

しかし、困難さゆえに、支援士資格は圧倒的な希少性と信頼性を持ちます。
学習プロセスは、あなたの経験を真の専門知識へと体系化し、複雑な問題を解決する本質的な思考力を授けてくれるでしょう。

もしあなたが、その他大勢の「IT担当者」で終わるのではなく、経営から頼られ、市場から求められる「セキュリティの専門家」としてのキャリアを本気で目指すなら、情報処理安全確保支援士への挑戦は、考えうる限り最も賢明で、リターンの大きい自己投資の一つです。

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FAQ:情報処理安全確保支援士の難易度や勉強法に関するよくある質問

Q. 合格に必要な勉強時間の目安は?

応用情報合格レベルの知識を持つ方で、一般的にさらに200時間~500時間の学習が必要とされています。
特に記述式の午後試験対策に多くの時間を要するためです。
1日2時間の学習を続けた場合でも、3ヶ月半~8ヶ月はかかる計算になります。
実務でセキュリティに触れる機会が少ない方は、半年以上の長期的な学習計画を立てることをお勧めします。

Q. 独学でも合格は可能ですか?

はい、独学での合格は十分に可能です。
支援士対策は質の高い市販の教材やWebサイトが非常に充実しているためです。
多くの合格者がIPAの公開する過去問と市販の参考書を中心に学習を進めています。
まずは評価の高い定番の参考書を1~2冊に絞り、それを徹底的にやり込む学習スタイルが最も効果的です。

Q. 維持コストが高いですが、元は取れますか?

はい、多くの企業ではそれを上回る金銭的メリットが用意されているため、十分に元は取れる可能性が高いです。
企業が資格取得者に対して、報奨金(一時金)や月々の資格手当を支給する制度を設けているからです。
例えば、月額30,000円の資格手当が支給される企業であれば、3年間で100万円以上の収入増となり、維持コスト(約14万円)を差し引いても大きなプラスになります。

Q. 午前Ⅰ試験の免除はいつまで有効ですか?

免除対象となる試験に合格(または基準点通過)してから2年間有効です。
具体的には、合格日(または基準点取得日)から起算して2年後の本試験までが対象となります。
この期間内であれば、何度受験しても午前Ⅰ試験は免除されるため、不合格になった場合でも次の試験で午前Ⅱ・午後試験に集中して再挑戦できます。

Q. 2026年度からCBT化されると聞きましたが、難易度は変わりますか?

IPAの公式発表によると、難易度や評価の基準は維持される見込みです。
出題範囲、形式(記述式を含む)、試験時間などに本質的な変更はないとされています。
ただし、会場のPCで解答を入力する形式になるため、タイピングの速度や操作に慣れておく必要はあるでしょう。
自身の学習計画に合わせて、現行のペーパー試験での合格を目指すか、CBT化[2]を待つかを判断するのが良いでしょう。


この記事で使われている専門用語の解説


1. 士業
弁護士、公認会計士、税理士のように、法律によって定められた特定の業務を独占的に行うことが認められている専門資格職の総称
2. CBT方式 (Computer Based Testing)
テストセンターに設置されたコンピュータを使用して実施される試験方式のこと。紙の試験と異なり、随時受験が可能な場合が多い
3. CISSP® (Certified Information Systems Security Professional)
米国の非営利団体(ISC)²が認定する、情報セキュリティに関する国際的な専門資格。グローバルで高い評価を得ている
4. SAML / OIDC
SAML(Security Assertion Markup Language)およびOIDC(OpenID Connect)のこと。異なるクラウドサービスやシステム間で、ユーザーの認証情報を安全に受け渡すための標準規格(シングルサインオンで利用される)
5. ゼロトラスト
「何も信頼しない」という考え方を前提としたセキュリティモデル。社内・社外を問わず、全てのアクセスを検証することで、脅威の侵入を防ぐ
6. CASB (Cloud Access Security Broker)
キャスビー。企業とクラウドサービスとの間に立ち、セキュリティポリシーを一元的に適用・監視する仕組み。クラウド利用の可視化や制御を行う
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マサトシ

外資系企業や金融機関等、複数企業で社内SEとして20年以上の経験|アプリ、インフラ、PM、IT戦略策定等幅広い業務を担当|情シスの採用責任者としてキャリア採用の面接経験も多数

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