上記のような疑問を解消します。
この記事でわかること
社内SEが日々向き合う現場の「あるある」シーンをご紹介します。
気づけばプロジェクトマネージャーの役割を担っていたり、システム障害の原因調査で再現待ちのループに陥ったり、あるいは困ったときは再起動が一番…なんて思ってしまう瞬間もあるでしょう。
これらは現場の社内SEが実際に経験する「あるある」です。
そんな問題をどうやって克服していけばいいのか、具体的な対策もこの記事で一緒に学んでいきましょう。これから社内SEとしてのキャリアを歩む読者の知識とスキルを深め、より良い業務環境を創り出す手助けになることを願っています。
この記事でわかること
- 情シス・社内SEの仕事「あるある」
- それらの「あるある」にどう対応していくか
社内SEの実態に迫る!仕事の「あるある」や課題、解決策
社内SEの仕事は、システムの開発・運用・保守を通じて、企業の業務改善やコスト削減などに貢献する重要な仕事です。
しかし、その反面、業務部門や経営陣、ベンダーとの関係性やコミュニケーションの不備、仕事量の増大などから、ストレスを抱えることがあります。
情シス・社内SEの業務効率やスキルに関する「あるある」
会社の業務効率化を推進する一方で社内SE自身の業務は非効率
情シスや社内SEが会社全体の業務効率化をITを用いて推進している一方で、自分たち自身の業務には非効率性があるという矛盾があります。
その原因として、会社全体としての優先度が情シスの業務効率化よりも他部署(例えば営業組織)のシステム改善に置かれることが挙げられます。
非効率な作業の具体例としては以下のようなものがあります。
具体例
- 月次の売上確定や、組織変更に伴う社員の異動情報反映を手作業で実施
- 機器やシステムのリストとの紐付け不備によりいざという時に機器がみつからない
- ファイルサーバのドライブが整備されておらず、必要なドキュメントが見つからない
問題を解決するためのアプローチとして、外部リソースの活用、プロセスの最適化、クラウドサービスの活用などが考えられます。
これらの方法を組み合わせて適用することで、社内SE自身の業務効率化が図られ、結果として全体の業務効率向上に寄与し、より良いITサポートが可能になるでしょう。
実はシステム開発/保守経験が必要でない仕事も存在する
私も、初めて情シスに転職する前は、社内システム「エンジニア」と言われるぐらいなので、情シスには基本的にシステム開発や保守の経験者しかいないのだろうと思ってました。
ところが実際の社内SEの業務には、開発や保守経験が必要ない仕事も多数存在します。これは、情シスや社内SEの業務が、システム開発や保守だけでなく、その他多数の役割を含んでいるからです。
職種 | 内容 | 必要なスキル |
プロジェクトマネージャ | プロジェクト全体の進行管理やリソース管理、スケジュール調整 | コミュニケーション能、タスク管理能力、調整力 |
ビジネスアナリスト | 業務要件の分析や設計、ユーザーニーズの把握、BPRの提案 | 業務知識、コミュニケーション力。業務部門から異動してきて、この役割を担当する人も多い |
ITサポート/ヘルプデスク | 社内ユーザーのITトラブル対応や疑問解決 | 傾聴力、問題把握能力、ホスピタリティ |
IT資産管理 | ハードウェアやソフトウェアの資産管理、ライセンス管理、購入や更新 | 簿記の知識 |
ITセキュリティ管理 | セキュリティポリシーの策定、脆弱性評価、セキュリティ対策の実施 | セキュリティに関する知識やスキル |
これらの役割は、開発や保守の経験がなくても遂行可能なものですが、それぞれ基本的なIT知識とスキル、そして各業務に応じた専門知識が求められることが指摘されています。
社内SEは社内ITだけでなく、最新ガジェットやパソコン全般にも精通しているという誤認
情報システム部門や社内SEは、社内IT以外にも最新ガジェットやパソコン全般に詳しいと誤解されることがありますが、必ずしもそうではありません。
この誤解は、情シスや社内SEが多種多様なIT業務を担当しており、それぞれの専門分野が異なるために起きます。例えば、クラウドインフラストラクチャやネットワークに精通したインフラエンジニアでも、個人向けスマートフォンについて詳しくない場合があります。
この誤解を解消するための解決策として以下の解決策が考えられます。
解決策
- 社内SEや情報システム部門が自分たちの専門分野や役割を明確に伝えることで、他部門のメンバーに適切な期待を持たせる
- 社内全体でITリテラシーを向上させるための取り組みを実施することで、他部門のメンバーが自ら問題を解決できるようする
- ITに関する質問や相談があった場合の適切な連絡先や手順を明確にし、情報が適切な部署や担当者に届くようにする
これにより、社内SEや情シスが対応しなくても解決できる問題を減らすことができ、社内SEや情シスがより重要な業務に集中できる環境を整えることができます。
IT関連職種である情シスの業務特性に起因する「あるある」
情シス・社内SEといった業務特性に起因して起こり得る事について以下にご紹介します
【転職先の上司は元部下だった?】受発注側の立場の逆転
情報システム部門(情シス)や社内SEの職員は、自身の専門知識や技術を活かし、また安定性を求めて、クライアントとしての事業会社の情報システム部門へ転職することが一定数見られます。この転職により、受発注の立場が逆転するケースも存在します。
情報システム部門や社内SEは専門的なスキルや知識を有しており、それらを活用できる環境への移行を求める傾向があり、また、事業会社には安定した経済状況や長期的な業務展望があり、これらが転職の動機となることが多いからです。
具体例
- システムエンジニアリングサービス(SES)でシステム開発や運用の経験を積んだSEが、そのスキルを活かして事業会社の情報システム部門に転職
- コンサルティングファームのコンサルタントが、顧客である事業会社の情報システム部門に転職
このような転職による立場の逆転は、その組織の情報システム部門や社内SEの知識と経験を生かす良い機会となります。彼らは以前の経験を活かし、新たな環境でのIT戦略立案やシステム運用を行うことができます。また、新たな視点や意見を持ち込むことで、組織全体のIT戦略の改善につながります。
ワークライフバランスの実現に苦戦する社内SE
社内SEは他部署のワークライフバランスをサポートする任務を担いながら、自身のワークライフバランスを保つことが難しい環境におかれることがあります。
企業のITインフラや基幹システムは基本的に24時間365日稼働し、その安定性と信頼性はビジネスの成功に直結しています。そのため、緊急のトラブルが発生した場合には、社内SEは即時に対応しなければならないことがあるからです。
具体例
- H社の社内SEは、他部署の社員がリモートワークを行うためにテレワーク環境をサポートしています。しかし、自身はネットワークの維持管理やトラブル対応のため、夜間や休日に出社が必要な場合があります
これらの状況は企業の労働環境に大きく依存するため、口コミサイトやエージェント経由で、入社前に労働環境を確認した方がよいです。
具体的には、情報システム部門や社内SEの労働環境が営業部門と比較して軽視されていないか、適切な人員配置や業務の分担が行われているか、夜間や休日の緊急対応が発生した場合、振替休日が適切に取得できるかどうかを確認することを推奨します。
上述の通り、社内SEは自身のワークライフバランスを維持することが課題となることがあります。それを避けるために適切な労働環境かどうかを事前に見極めることが重要です。
スキルアップのためのセミナーに参加するが、疲労が溜まって寝てしまうことがある
社内SEは、新しい技術や知識の追求が重要であるため、セミナーに参加する機会も多いです。しかし、日常業務の疲労が蓄積されることで、せっかくのセミナー中に居眠りしてしまうことがあります。
社内SEは日々の業務に加えて新しい技術の習得を求められ、結果疲労が蓄積する傾向にあります。
この状況を防ぐためには、適度な仕事量と効率的なタスク管理を行うこと、業務が集中する時期を避けて疲労が蓄積しにくいタイミングでセミナーに参加することが有効です。
新しい知識や技術の習得は社内SEにとって重要であり、それを実現するためにはセミナーへの参加が不可欠です。しかし、過労で寝てしまわないように、適切な仕事量の管理とセミナー参加のタイミングに注意しましょう。
社員のマスタ情報を手作業で更新するため月末月初は夜なべ
社内SEは企業内の情報システムの運用・保守を担当しているため、業務が集中する特定の期間は深夜まで働くことがあります。
これは特に社員の異動情報のような定期的に更新が必要なデータが手作業で更新される業務が多く、また業務の自動化が進んでいない状況も、長時間労働を引き起こしています。
これらの問題を解決するための対策として、以下のようなアプローチが考えられます
解決策
- 業務の自動化:手作業で行われている更新業務を自動化し、効率化
- 分散処理:月末だけでなく、定期的に情報の更新を行い、業務量の偏りを緩和
- 協力体制の構築:他部署やアウトソーシング先と協力し、業務を分担することで、社内SEの負担を軽減
古株社員だけにしかわからない仕様の存在・属人化
長年稼働しているシステムは、ノウハウや経験が古株社員に集中する傾向があります。これにより、新たに参画した社内SEが必要な情報を習得しにくい状況が生まれ、効率的な業務遂行が困難になってしまいます。
このような状況は属人化を助長し、組織の持続的な成長が阻害されることが懸念されます。また、そのような古株社員が退職した際にシステム運用に大きな支障が出るリスクもあります。この問題に対処するためには、以下のような対策が有効です。
解決策
- システムの特殊な仕様や運用方法を含め、全ての情報を適切にドキュメント化し、新しい社内SEが容易にアクセスできるようにする
- 定期的な技術勉強会やミーティングを開催し、古株社員と新しい社内SEが知識や経験を共有できる機会を設けることで、属人化を防ぐ
予算やプロジェクトの進捗報告や決裁に異常にパワーがかかる
社内SEの職務には、IT予算策定やプロジェクトの進捗報告、決裁業務等が含まれ、これらが非常にエネルギーを消費する作業となることがあります。したがって、情報共有の効率化や業務プロセスの改善、適切な報告資料の作成技術などが重要となります。
例えば、大手企業の社内SEが新規プロジェクトを立ち上げる際には、予算計画/案件着手決裁/要件定義完了決裁/リリース判定等、決裁資料の作成に多くの時間を必要とし、その結果プロジェクトの開始が遅れてコストやスケジュールが圧迫されることがあります。
これを改善するためには以下の対応策が考えられます。
解決策
- 適切なツールやプラットフォームの活用により、情報共有を効率化し、報告や決裁のプロセスをスムーズに行えるようにする
- 進捗報告や決裁のプロセスを見直し、効率化を図る。これには、テンプレートの活用や決裁ルートの最適化などが含まれる
- 社内SEだけでなく、組織全体で情報共有や業務プロセスの改善に取り組むことで、業務負担の分散と効率化を図る
進捗報告や決裁にどの程度のパワーがかかるかは企業の業務プロセスや社内SEのスキルにより異なりますが、上記のような対応策により軽減することが可能です
情シス・社内SEの悩ましいシステム障害対応に関する「あるある」
誤検知によるオオカミ少年状態と対応の遅れ
社内SEが監視システムの誤検知に慣れることで、重大な問題の発覚が遅れる「オオカミ少年」現象に直面することがあります。
監視システムの精度は、企業のシステム稼働率や業務効率に大きな影響を与えます。Gartnerによれば、ITインフラのダウンタイムは1時間あたり平均約5,600ドルの損失をもたらします。しかし、頻繁な誤検知により社内SEがこれに慣れてしまうと、深刻な問題への反応が遅れるリスクが高まります。
具体的な例として、誤検知に慣れた社内SEが本物の障害発生時にすぐに対応できなかった結果、システムダウンタイムが長引き、企業に大きな損失をもたらす可能性があります。
解決策
- 監視システムの設定と見直し:正確な設定と定期的な見直しにより、誤検知を減らす
- アラートの優先度設定:重要な障害へ迅速に対応できるよう、アラートに優先度を設定
- 障害対応プロセスの整備:障害発生時に効果的に対応するためのプロセスを整備
上記の通り「オオカミ少年」現象は存在しますが、適切な対策を実行することで、社内SEは重大な障害への対応を遅らせることなく、迅速かつ効果的に対応する能力を向上させることができます。これにより、企業のシステム稼働率や業務効率の向上に寄与することが期待できます。
「再現待ち」という名の迷宮入り障害
社内SEがシステム障害に対処する際、原因調査で行き詰まり、「再現待ち」の状態になって迷宮入りすることがあります。
システム障害の原因調査は、以下の理由から難しい場合があります。
分類 | 原因調査が難しい理由 |
複雑性 | 現代のITシステムは、多くのコンポーネントが連携して動作しており、それらの相互作用が複雑です。そのため、原因を特定するのが難しい |
非定型的な障害 | 一部の障害は、特定の条件下でのみ発生するため、再現性が低くなります。そのため、原因調査が行き詰まる |
知識不足 | 社内SEは、システム全体に関する知識を持っているとは限りません。そのため、特定の技術領域に関する知識が不足している場合、調査が難航 |
それでは、こういったシステム障害を迷宮入りさせないために、私たちにどういったことができるのでしょうか。
解決策
- ドキュメント整備:システムのアーキテクチャやコンポーネントの説明、設定情報などをまとめたドキュメントを整備し、社内SEが障害発生時に迅速に対応できるようにします
- 定期的なシステム監視とログ解析:システム監視ツールを用いて、定期的にシステムの状態をチェックし、異常があればすぐに対応できるようにします。また、ログ解析を行い、過去の障害発生時のデータを参照できるようにすることで、原因特定に役立ちます
- 外部専門家の活用(続き):外部の専門家やコンサルタントを活用することで、社内SEが持ち合わせていない専門知識や経験を活用し、迅速な原因特定と解決策の提案が可能になります
システム障害対応において「再現待ち」ステータスで迷宮入りする問題は、ドキュメント整備、定期的な監視、情報共有、外部専門家の活用などの対策を講じることで回避できます
事業部門が要望した案件なのに気付くと情シスがPMになっている
情報システム部門のメンバーが、事業部門からの要望を受けたプロジェクトに参加する際、プロジェクトマネージャー(PM)の役割を担ってしまうことが多々あります。
この問題が発生する理由の一つは、情報システム部門のメンバーが技術的な知識やプロジェクトマネジメントの知識を持っているため、自然とその役割になってしまうことがあげられます。
解決策
- プロジェクトの開始時に役割分担を明確化する
- プロジェクト全体の進捗状況や課題を定期的に共有し、役割の逸脱やずれが無いか定期的に確認
- 必要に応じて、独立した第三者としてプロジェクトマネージャーを外部から招聘
上記の通り、事業部門からの要望に応えるプロジェクトにおいて、情報システム部門のメンバーがプロジェクトマネージャーの役割を担ってしまうことがある。
役割分担の明確化や定期的な進捗共有、外部のPM招聘するなどの対応が必要です。
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…
「困った時の再起動」で解決することが多数ある
社内SE(システムエンジニア)の業務では、確かに「困った時の再起動」で解決することが多い事象があるが、問題解決のスキルを磨くためにも、再起動に頼らず他の方法で解決を試みることが重要である。
再起動が問題解決に効果的である理由は、システムの初期状態に戻すことで一時的なエラーや不具合が解消される場合が多いためです。さらに、再起動は素早く実施できるため、問題解決の時間を短縮できることがあります。
ただし、再起動で解決しない問題に対処できなくなることや、再起動の頻度が増えることで作業効率が低下する可能性もあります。
社内SEとして、幅広い問題解決能力を身に付けることが必要なため、再起動だけでなく他の方法も試みることが重要です。
解決策
- 再起動以外の方法で問題解決を試みる(例:リソースの確認や設定の変更)
- 定期的なシステムメンテナンスやアップデートを実施する
- 社内SE同士で情報共有や勉強会を行い、問題解決スキルを向上させる
上記の通り「困った時の再起動」は効率的な対処方法であるが、他の解決方法の事前の準備を行う事により社内SEの業務遂行能力が向上し、企業全体の生産性向上に寄与することが期待できる
まとめ
以上のように、情報システム部門や社内SEの業務には、様々な「あるある」現象が存在します。
業務特性上、致し方ない部分もあるかと思いますが、原因を知り、適切な対策をすることによりある程度解消可能です。