白いオフィスチェアに座り、複数画面でシステム状態をチェックするエンジニアの後ろ姿。

社内SEの仕事

【システム運用保守のリアル】社内SEの役割とキャリアパス

「社内SEの『システム運用保守』って、一体どんな仕事?」
「開発がメインだったけど、運用保守って地味でスキルアップできないのかな…」
「ウチの会社の運用保守、これで大丈夫?他の会社はどうしてるんだろう…」
質問者
質問者

開発業務を中心にキャリアを歩んでこられた方にとって、「システム運用保守」は少し地味な仕事に映るかもしれません。しかし、そのイメージは大きな誤解です。

結論から言うと、現代の社内SEにとって運用保守とは、ビジネスを止めない「守りの要」であると同時に、業務改善やコスト削減に繋がる「攻めの起点」にもなる、非常に戦略的な仕事です。

この記事では、社内SEの「システム運用保守」の具体的な仕事内容から、その奥深さ、そして「守り」の経験をどう「攻め」のキャリアに繋げていくかまで、私の実体験を交えながら網羅的に解説します。

この記事を書いた人(マサトシ)

マサトシ

マサトシ(詳細プロフィールはこちら

SIerでの開発・保守経験を経て、金融、外資系など計4社の事業会社で社内SEとして約20年にわたりキャリアを築いてきました。インフラ、アプリ、ヘルプデスクから部門長まで幅広く経験し、現在は採用業務にも携わっています。社内SEの本音や転職・キャリアアップのポイントなど、実務者だからこそわかる現場情報をお届けします。

この記事を読めば、こんなことが分かります!

  • 社内SEの「システム運用」と「システム保守」の具体的な業務内容
  • 「守り」の業務から「攻め」の改善提案に繋げるための視点
  • クラウド時代に求められる新しい運用保守スキル
  • 運用保守業務のリアルなやりがい、大変さ、そしてキャリアパス

この記事は、社内SEの仕事の中でもリリース後の「運用保守」フェーズに特化して解説します。まずはシステム担当の仕事の全体像を知りたい方は、以下の記事からご覧ください。
>>業務システム担当とは?仕事内容の全体像を4つのフェーズで徹底解説

「システム運用」と「システム保守」の違いとは?


まず「システム運用保守」という言葉を分解し、それぞれの役割を理解することが、業務全体を把握する第一歩です。

  • システム運用:稼働中のシステムが日々正常に機能するように管理・操作する「守り」の活動。システムの安定稼働を維持することが目的です。
  • システム保守:発生した不具合への対処や、機能・性能を維持・改善するための「改善」の活動。システムに何らかの変更を加えることが特徴です。

システム保守は、さらにその目的によって「修正保守(バグ修正)」「適応保守(OSバージョンアップへの対応など)」「完全保守(機能改善)」「予防保守(障害の未然防止)」などに分類されます。このように、一口に保守と言っても、その活動は多岐にわたるのです。

実際にはこの2つは密接に関連しており、同じチームが担当することがほとんどです。この記事でも、これらをまとめて「システム運用保守」として解説を進めます。

【本編】システム運用保守の具体的な仕事内容


社内SEが担う運用保守の業務は非常に多岐にわたります。ここでは、その代表的な仕事内容を、H4見出しも活用しながら具体的に見ていきましょう。

日常的なシステム監視とオペレーション

ここでは、システムの安定を支える日々の地道な活動と、その裏側にある重要な役割について解説します。

システム監視

サーバーやネットワーク、アプリケーションが正常に稼働しているか、リソースに異常はないかなどを監視ツールで24時間365日チェックします。異常を早期に検知し、大きな障害になる前に対処することが目的です。

定型オペレーション

データのバックアップ取得、定時バッチ処理の実行確認、ログの確認など、手順書に沿って正確に実施します。この地道な作業が、システムの信頼性を支えています。

BCPの一環で、バックアップサイトのテストもするんですね。大変そうです…。
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
はい、これも重要な運用業務です。万が一の際に事業を守るため、BCP1の一環として、バックアップサイト(DRサイト2)が本当に機能するかを定期的にテストします。遠隔地での作業になることもあり、1日がかりの大仕事になることも。ですが、大切な備えなんですよ。

障害対応とインシデント管理

ここでは、システム障害という緊急事態に、社内SEがどのように立ち向かい、そこから何を得るのかを解説します。

  • 障害対応:監視アラートやユーザーからの報告に基づき、原因を切り分け、システムを迅速に復旧させます。
  • 関係各所への報告:障害の状況や影響範囲、復旧見込みなどを、ユーザー部門や経営層へ正確に報告します。
  • 原因究明と再発防止策:復旧後、障害の根本原因を調査し、同様の障害が再発しないための恒久的な対策を立てます。

障害対応はプレッシャーが大きそうですが、スキルアップにも繋がるんですね。
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
その通りです。大変ですが、システムへの理解が格段に深まります。ただ、再発防止策を重ねた結果、手順がどんどん複雑化してしまう…というのは“運用保守あるある”かもしれません(笑)。

システム改善と最適化(守りから攻めへ)

ここが、運用保守業務を「攻め」の活動に変える重要なポイントです。日々の運用から得られる気づきが、大きなビジネス価値を生むことがあります。

パフォーマンス改善

システムの応答速度などを分析し、「最近、この処理が遅い」といったユーザーの不満を解消するため、設定変更やリソース増強で性能を改善します。

運用業務の自動化

ログ収集やレポート作成といった定型作業を、スクリプトやRPA3ツールで自動化し、工数削減と人的ミス削減を目指します。これにより生まれた時間で、より創造的な業務に取り組むことができます。

セキュリティ対策の実施と強化

企業の重要な情報資産をサイバー攻撃などの脅威から守る、最重要課題の一つです。専門部署と連携しながら、現場レベルでの対策を講じます。

  • 脆弱性対応:セキュリティパッチの適用計画を立て、業務影響を最小限に抑えながら適用します。
  • アクセス権管理:不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、システムのアクセス権を定期的に見直し、適切に管理します。

ドキュメント管理とナレッジ共有

運用保守業務の品質は、ドキュメントの質に大きく左右されます。この地道な作業が、将来の自分やチームを助けます。

  • 各種ドキュメントの作成・更新:運用手順書、障害対応記録、構成管理表などを常に最新の状態に保ちます。
  • ナレッジの共有:FAQやナレッジサイトを整備し、チーム内での情報共有を促進することで、業務の属人化を防ぎます。

運用保守に求められるスキルセット


運用保守業務を遂行するには、技術的なスキルとビジネスに近いスキルの両方が不可欠です。

幅広い技術スキル(テクニカルスキル)

担当するシステムによって求められる技術は様々ですが、主に以下のような知識が求められます。

OS・ネットワーク・DB

LinuxやWindows ServerといったOS、Ciscoなどのネットワーク機器、OracleやMySQLといったデータベースに関する知識は、多くの現場で基本となります。

クラウド・仮想化技術

AWS, Azureといったクラウドプラットフォームや、VMwareなどの仮想化技術の知識は、現代の運用保守に欠かせません。

スクリプト・自動化ツール

運用を効率化するため、Pythonやシェルスクリプト、Ansibleのような構成管理ツールの知識も重要性を増しています。

重要なソフトスキル

技術力と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、以下のソフトスキルです。

  • 問題解決能力:障害発生時に、冷静に状況を分析し、根本原因を特定して解決策を導き出す能力。
  • コミュニケーション能力:技術者以外のユーザーにも分かりやすく状況を説明したり、多様な関係者と円滑に連携したりする能力。

運用保守のリアル|やりがいと大変さ


どんな仕事にも光と影があるように、運用保守業務にも特有のやりがいと大変さがあります。

やりがいの源泉:事業への貢献とユーザーからの信頼

  • 縁の下の力持ちとしての達成感:システムが問題なく動き続けることで、多くの社員の業務を支えているという事実は、大きな達成感に繋がります。
  • ユーザーからの直接的な感謝:「トラブルを迅速に解決してくれて助かった」「システムが使いやすくなった」といった感謝の言葉は、日々のモチベーションになります。
  • 問題解決によるスキルアップ:複雑な障害の原因を特定し解決した時など、自身の知識やスキルが直接成果に結びつく喜びを感じられます。

地道な仕事でも、信頼関係が生まれるのは素敵ですね。
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
ええ。結局は人と人との繋がりですから。運用保守で築いた信頼が、後の大きなプロジェクトを円滑に進めるための土台になったりするんですよ。

大変なこと:プレッシャーと時間外対応の現実

  • 障害発生時のプレッシャー:システム障害は業務停止に直結するため、迅速な復旧が求められ、大きなプレッシャーの中で対応にあたる必要があります。
  • 夜間・休日の対応:システムのメンテナンス作業や、予期せぬ障害対応のために、業務時間外や休日に対応が必要になることがあります。
  • 「できて当たり前」という風潮:システムが安定稼働している状態が「当たり前」と見なされやすく、問題が発生した時だけ注目されるという側面もあります。

転職するなら、時間外対応の頻度は確認したほうが良さそうですね。
質問者
質問者

マサトシ
マサトシ
絶対に確認すべきです。特に、少数精鋭で重要なシステムを見ている場合、長期休暇中でも障害対応の電話が手放せない…なんてことも。これは個人の責任感ではなく会社の体制の問題なので、慎重に見極める必要があります。

「守り」から始まる多様なキャリアパス


運用保守の経験は、多様なキャリアへの出発点となります。日々の業務を通じて培われるシステム全体への深い理解は、多くの専門職で活かせる貴重な財産です。

専門性を深めるスペシャリストの道

クラウド、セキュリティ、データベースといった特定分野の専門家を目指すキャリアです。クラウドアーキテクトやセキュリティエンジニアは、特に需要が高い専門職です。

開発・企画へ展開する道

運用経験で得た現場の課題感を武器に、開発や企画の領域へ進むキャリアです。運用の大変さを知っているからこそ、より実践的なシステム設計ができるDevOpsエンジニアや、現場に寄り添ったIT企画を立案できるポジションで価値を発揮できます。

組織を導くマネジメントの道

チームリーダーやITマネージャーとして、メンバーの育成やプロジェクト管理、ベンダーコントロールなどを担います。幅広い視野と調整力が求められます。

まとめ:「守りから攻めへ」運用保守から始まるキャリアパス

この記事では、社内SEの「システム運用保守」について、その具体的な仕事内容から、やりがいと大変さまで、幅広く解説してきました。

運用保守は、単なる「縁の下の力持ち」ではありません。日々の業務から得られるユーザーの声やシステムデータは、次の業務改善やシステム刷新に繋がる「宝の山」です。

「守り」の業務で得た深い知識と信頼を武器に、業務改善提案やIT企画といった「攻め」の領域へキャリアを展開していく。それこそが、運用保守から始まる社内SEのキャリアの醍醐味と言えるでしょう。

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FAQ:「社内SEのシステム運用保守」についてよくある質問

Q1. 運用保守業務は、スキルアップに繋がりにくいのでしょうか?
A1. そんなことはありません。障害対応を通じて深い技術知識が身につきますし、運用業務の自動化や効率化を推進することで、スクリプト作成能力や新しいツールへの知見が深まります。また、ユーザーとの対話を通じて業務知識が身につくことは、将来IT企画などの上流工程を目指す上で大きな強みになります。

Q2. 開発ベンダー(SIer/SES)が行う運用保守との一番の違いは何ですか?
A2. 最終的な責任の所在と、裁量の大きさです。社内SEは自社システムの安定稼働に最終責任を負い、ビジネスへの影響を第一に考えて行動します。その分、改善提案や技術選定など、より広い裁量を持って業務に取り組めるチャンスがあります。

Q3. 夜間や休日の対応は必ず発生しますか?
A3. 必ずではありませんが、その可能性はあります。企業の文化や担当するシステムの重要度によって大きく異なります。24時間稼働の工場システムやECサイトなどを担当する場合、シフト制やオンコール対応が求められることが多いです。転職時には、時間外対応の頻度や体制について確認することが重要です。

Q4. 運用保守から、開発やIT企画のような他の職種にキャリアチェンジすることは可能ですか?
A4. はい、十分に可能です。運用保守業務を通じて得られる深いシステム知識や業務知識、ユーザーとの信頼関係は、他の職種でも高く評価されます。特に、現場の課題を熟知していることは、実用的なIT企画を立案する上で非常に大きなアドバンテージとなります。

用語解説

1. BCP (Business Continuity Plan)
事業継続計画。災害やシステム障害などの緊急事態が発生した際に、損害を最小限に抑え、中核となる事業を継続・早期復旧させるための方針や手順をまとめた計画のこと。
2. DR (Disaster Recovery)
災害復旧。BCPの一部であり、災害などによってシステムが停止した場合に、バックアップサイトなどを用いてシステムを復旧させるための具体的な技術や手順を指す。
3. RPA (Robotic Process Automation)
ソフトウェアロボットを活用して、PC上で行う定型的な事務作業を自動化する技術のこと。運用業務の効率化にも活用される。
4. IaC (Infrastructure as Code)
サーバーやネットワークなどのITインフラの構成を、プログラムコードで記述・管理する手法。手作業によるミスを防ぎ、インフラ構築を自動化・効率化できる。
5. CICD (Continuous Integration / Continuous Delivery)
継続的インテグレーション/継続的デリバリー。ソフトウェアの変更を頻繁にリポジトリに統合し、テストからリリースまでの一連のプロセスを自動化することで、開発を高速化する手法。
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マサトシ

新卒で大手SIerに就職|その後、外資系企業や金融機関等、複数企業で社内SEとして計15年以上の経験|アプリ、インフラ、PM、IT戦略策定等幅広い業務を担当|情シスの採用責任者としてキャリア採用の面接経験も多数

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